3月に幕を開ける第4回WBC(※)。前回こそ優勝を逃したが、第1回、第2回と連覇している日本だけに今回も優勝が期待される。しかし、侍ジャパンの評価は、思いのほか低く「史上最弱」との声もある。原因は、メジャーリーグでプレーする日本人選手がほとんど参加していないからだ。パワー不足という点では的を射た指摘だが、それだけが勝つための条件ではない。日本が得意とする「スモールベースボール」は、協調と堅実を武器にする戦法で、豪快な長打や剛速球を投げることだけに頼る野球ではないからだ。
そんな中で注目すべき選手を挙げるとすれば、今シーズンからヒューストンでプレーする青木宣親だろう。米国で6年目のシーズンを迎える青木は、侍ジャパンにとって数少ないメジャーリーガーだ。彼の経験がチームに自信と戦いに有効な情報をもたらすことは間違いない。35歳になる青木だが、走攻守どれをとってもまだ衰えを知らない。小久保裕紀監督も、彼の攻撃的なプレースタイルがチームに浸透することを願っているはずだ。
青木の積極性は、ヤクルト時代のこんなエピソードにもよく表れている。早稲田大学から入団した青木だが、ルーキーシーズンの2004年は、1軍での出場が10試合しかなかった。2軍では3割7分2厘を打ち首位打者も獲得していた。プロのスピードにも慣れてきた。もっと1軍でプレーしたい。青木は当時の若松勉監督に年賀状を出す。そこには臆することなくこう書いた。
「もっと僕を使ってください。必ず期待に応えられるように頑張ります」
技術的な手応えや自分自身に自信がなければ書けない「訴え」かもしれないが、そうやって自分をアピールすることは、野球に限らずどんな仕事でも大切な姿勢といえるだろう。自分を使ってほしいと言い出すことは勇気のいることだ。ただそれを口にすることで、その仕事に対する覚悟や決心ができることも確かだ。ミルウォーキー、カンザスシティー、サンフランシスコ、シアトル、そしてヒューストンと目まぐるしくチームを移りながらも彼が活躍を続けられるのは、そうした積極性があればこそのことだろう。
その姿勢は打席に入っても出る。1球目から果敢に打っていく。一発勝負の国際試合では、その攻撃性が何よりも大事な武器なのだ。
※ワールド・ベースボール・クラシックの略称。2006年3月に第1回、その後4年ごとに開催されている。
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