一時期に高まったアルゼンチンなどの新興国リスクは、最近やや落ち着きを取り戻しつつあるように見える。一方、ウクライナの問題が顕在化したことや中国の理財商品の問題、いわゆる「チャイナリスク」などは、今後の世界経済の展開を考える上で無視できない要因になっている。
ウクライナを巡るロシアと米国・欧州の対立が鮮明化しており、今のところ今後の展開も読みにくい。ロシアと米国の対立が一段と先鋭化することも考えられる。そうなれば、制裁措置の実行などによって、世界の経済活動が阻害されることも懸念される点だ。この問題は、世界の政治情勢にも大きな影響を及ぼす可能性が高く、解決までに時間を要すると考えられる。
専門家の多くは、「ウクライナを巡る欧米諸国とロシアの対立が、武力衝突に発展する可能性は低い」との見方を示している。しかし、クリミア半島の情勢の展開によっては、米国・欧州諸国とロシアの対立が先鋭化する可能性は否定できない。そうなると、経済制裁の発動などによって、世界経済にとって大きなマイナス要因となる恐れがある。
また、ウクライナ情勢が、主要国の政治に与える影響も心配な点だ。米国のオバマ大統領の支持率を考えると、対ロシア問題が秋の中間選挙の重要なファクターになるはずだ。強気の姿勢を崩さないプーチン大統領と、妥協の余地が狭くなったオバマ大統領の対立が激しくなり、それが世界的な政治情勢に不安感を与えることが懸念される。そうなった場合には、世界の金融市場はさらに不安定になるだろう。 一方、チャイナリスクについても、中国の金融制度などに絡む根の深い問題で、短期間で解決することは難しいだろう。中国の金融制度が未成熟であることを考えると、今後、銀行を通さない、いわゆるシャドーバンキングなどの問題が予想外の展開を示す可能性があり、注意が必要だ。
シャドーバンキングを通した理財商品の一部が実際にデフォルトになっており、それが近い将来、中国の金融市場にとって重大なリスクになることが考えられる。1月下旬まで、中国当局は理財商品のデフォルトを回避するスタンスをとっていたものの、モラトリアムが生成されることを嫌って、既に石炭採掘企業向けの金融商品のデフォルトを容認する姿勢に転換している。
問題は、そうした方針展開が、中国の金融市場に大きな影響を与えることだ。金融市場が当局の方針変更に耐えることができれば良いが、個人を中心とした投資家が政策展開に十分に対応できないようだと、金融市場が混乱し、実体経済にも大きな波乱を呼ぶ。そうなれば、わが国をはじめ世界経済の足を引っ張る可能性が高い。特に、消費税率が引き上げられた直後のわが国は、円安・株高を基礎にしているアベノミクスの政策効果を減殺させられることも考えられる。
わが国経済の先行きや金融市場への影響を想定すると、当面、ウクライナと中国、2つのリスク要因の展開から目が離せない。
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