今月は希少価値が高いべっ甲細工のかんざしをご紹介します。
「べっ甲」は熱帯地方の海に生息する「タイマイ」と呼ばれる海亀の甲羅を利用してつくります。そのため、国内では原料が入手できません。そんなべっ甲を使った「べっ甲細工」は、鎖国していた江戸時代の唯一の貿易港であった長崎に、その原料と技術が伝わり、発展しました。黄色に黒や茶色の斑点模様のあるのがべっ甲の特徴で、特に黄色部分の多いものが〝上物〟として珍重されました。
300年余りの歴史を誇る江崎べっ甲店は、代々伝統の技を継承しつつ、時代にマッチした品をつくってきました。かんざしをはじめとして、ブローチ、ペンダント、眼鏡フレーム、カフス、タイ留めなど、艶やかな輝きの中にも自然素材ならではのぬくもりが伝わってきます。
かんざしにちりばめられた繊細な透かし彫りは、きりで穴を開け、極細の糸のこで1カ所ずつ彫り進めた、まさに職人技の極致です。
最新号を紙面で読める!