経済産業省はこのほど、平成30年度予算の経済産業省関係の概算要求を取りまとめ、公表した。概算要求額は、29年度当初予算比6.2%増の1兆4198億円。このうち中小企業対策費は1290億円で、29年度当初予算比15・6%増となっている。内容的には事業承継や再編・統合、IT導入支援、人材不足対策について重点的に取り組むとしている。30年度の中小企業関係の概算要求のポイントは次の通り。
平成30年度中小企業・小規模事業者政策の重点項目
1.事業承継・再編・統合による新陳代謝の促進
30要求・91億円←29当初・61億円
○事業承継・再編・統合集中実施事業
【16億円(新規)】
・地域の支援機関が連携した事業承継ネットワークを構築し、休廃業リスク分析なども活用することで、地域での事業承継支援を促進する。
・事業の再編・統合促進のため、地域金融機関などによる計画の策定支援や設備投資などの支援を行う。
○中小企業再生支援・事業引継ぎ支援事業(拡充)
【75億円(61億円)】
(うち事業引継ぎ関連【25億円(17億円)】)
・後継者問題を抱える中小企業・小規模事業者の事業引き継ぎや事業承継の促進・円滑化を図るために、課題の解決に向けた適切な助言、情報提供およびマッチング支援などをワンストップで行う。また、創業を希望する者と後継者が不在の事業主などとのマッチングも行う。あわせて、事業の収益性はあるが、財務上の問題を抱えた中小企業・小規模事業者の事業再生の支援を行う。
2.中小企業・小規模事業者におけるIT活用の拡大
3.人材不足への拡大
30要求・32億円←29当初・17億円
○中小企業・小規模事業者決済情報管理支援事業
【4億円(新規)】
・受注から入金までの決済業務などについてITを用いて効率化する実証を行い、全国の中小企業に普及するための体制を整備する。(関連予算)
○経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業
【44億円の内数】
・デジタルガバメント実現のため、法人認証基盤の整備やデータ連携の技術基盤を整備するとともに、中小企業向け行政サービスのデジタル化(施策情報の発信、各種申請)、ITクラウドサービスの見える化、官民データベースの連携などの環境を整備する。
○地域中核企業・中小企業等連携支援事業(拡充)
【178億円(155億円)】
・中小企業が地域中核企業などと連携して行う活動を、研究開発から市場獲得まで一体的に支援する。その中で、来年度より中小企業のIoT、AIなどの技術を活用する事業についての取り組みを促進する。
○中小企業・小規模事業者人材対策事業(拡充)
【28億円(17億円)】
・中小企業・小規模事業者が必要とする人材の地域内外からの発掘・確保・定着を一括支援する。「人手不足対応ガイドライン」の普及や、中核人材などの確保に向け多様な雇用形態の導入促進に取り組む。あわせて、中小サービス業・ものづくり現場・まちづくりの中核を担う人材や、小規模事業者を支援する人材を育成する。
(関連予算)
○中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業(拡充)
【59億円(55億円)】
・「よろず支援拠点」を活用し、中小企業が抱える経営課題に対応するワンストップ相談対応を行う。あわせて、高度な課題に対応する専門家の派遣や、経営者保証ガイドラインなどの周知・普及を行う。
引き続き粘り強く取り組んで行く中小企業・小規模事業者政策
1.地域未来企業の発掘、経営力強化・生産性向上に向けた取り組み
○中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業(拡充)
【37億円(24億円)】
・海外市場に活路を見いだそうとする中小企業・小規模事業者に、事業計画策定から海外販路開拓、現地進出、進出後の課題に対する対応までを一貫して戦略的に支援する。
○ふるさと名物応援事業(拡充)
【16億円(14億円)】
・各地域の資源を活用した「ふるさと名物」のブランド化や商品・サービス開発、販路開拓などを支援する。
○地域・まちなか商業活性化支援事業(拡充)
【21億円(18億円)】
・商店街が行う全国モデルとなる新たな取り組みを創出するため、商店街を類型化(①生活支援型、②エリア価値向上型、③観光型)し、規模、ステージに合ったきめ細かな支援を実施する。また、中心市街地におけるコンパクトシティー化に取り組む意欲ある地域における波及効果の高い複合商業施設などの整備を支援する。
○(再掲)経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業
○(再掲)地域中核企業・中小企業等連携支援事業
○小規模事業対策推進事業(拡充)
【66億円(49億円)】
・商工会・商工会議所が「経営発達支援計画」に基づき実施する伴走型の小規模事業者支援を推進する。
・小規模事業者が商工会・商工会議所と一体となって経営計画を作成し、販路開拓に取り組む費用を支援する。
○小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資等)(継続)
【43億円(43億円)
・商工会議所・商工会・都道府県商工会連合会の経営指導員の経営指導を受けた小規模事業者に対し、日本政策金融公庫が一定額を上限に無担保・無保証人・低利で融資を行う。
○中小企業連携組織対策推進事業(継続)
【7億円(7億円)】
・全国中小企業団体中央会に対し、組合への運営指導を行うための経費を補助する。また、効果的な経営改善・革新に取り組む組合などに対して、事業に係る経費の助成を行う。
○(再掲)中小企業・小規模事業者決済情報管理支援事業
2.活力ある担い手の拡大
○地域創業活性化支援事業
【10億円(新規)】
・地域での創業とそれによる地域経済の活性化を一層推進していくため、潜在的創業者の掘り起こしから創業前の支援、創業後の成長の後押しまでを実施する。
○中小企業基盤整備機構運営費交付金(拡充)
【188億円(179億円)】
・中小企業基盤整備機構において、中小企業・小規模事業者の「創業・新事業展開の促進」などのための施策を行う。
○(再掲)事業承継・再編・統合集中実施事業
○(再掲)中小企業再生支援・事業引継ぎ支援事業
○(再掲)中小企業・小規模事業者人材対策事業
○(再掲)中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業
3.安定した事業環境の整備
○中小企業取引対策事業
【14億円(14億円)】
・下請事業者による連携を促進することで中小企業・小規模事業者の振興を図る。また、下請取引に関する相談や、下請代金支払遅延等防止法の周知徹底・厳正な運用、官公需情報の提供などを行うことで取引に関する事業者の課題に対処する。
○消費税転嫁状況監視・検査体制強化等事業
【27億円(29億円)】
・中小企業・小規模事業者などが消費税を円滑に転嫁できるよう時限的に転嫁対策調査官(転嫁Gメン)を措置し、違反行為の監視・検査体制強化を図る。
○政策金融・信用保証による資金繰り支援(拡充)
【263億円(226億円)】
・政策金融や信用保証により中小企業・小規模事業者の資金繰りの円滑化を図る。
4.災害からの復旧・復興
○中小企業組合等共同施設等災害復旧事業(中小企業等グループ補助金)
【復興特会】・被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の津波浸水地域や福島県の避難指示区域などを対象に、中小企業などのグループが作成した復興事業計画に基づく、施設の復旧・整備を支援する。
○被災地向けの資金繰り支援等(拡充)
【復興特会】
・東日本大震災で被災した中小企業・小規模事業者に対して「東日本震災復興特別貸付」などによる資金繰り支援を行う。また、「産業復興相談センター」において被災中小企業・小規模事業者の事業再生などを支援する。
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