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事例3 待望の東北中央自動車道開通で3商工会議所が連携し観光客誘致

福島商工会議所/米沢商工会議所/相馬商工会議所

福島商工会議所の渡邊博美会頭

東北中央自動車道(以下、東北中央道)は、太平洋沿岸部の福島県相馬市から福島市を通り、山形県米沢市を経由して秋田県横手市までを結ぶ。現在は部分開通の状況だが、福島市と米沢市の区間が2017年11月に開通、福島市と相馬市の区間が18年3月に約6割の部分が開通した。これにより交通の便が良くなり、3市連携の観光の取り組みが進んでいる。それぞれの現況と展望について、各商工会議所の会頭に話を聞いた。

福島商工会議所 渡邊博美 会頭

交流人口が以前の1・5倍に

「東北中央道はこの地域に必要な道路として、38年目になりますが3市が協力して建設を働きかけてきました。まだ一部開通ではありますが、3市が結ばれたことで、その効果は非常に大きなものとなっています」と福島商工会議所会頭の渡邊博美さんは言う。例えば福島市と相馬市を結ぶ区間は、震災を機に復興支援道路として整備することが国の政策として決まり、建設が急ピッチで進んだ。福島市と米沢市の区間も同様で、どちらの区間も通行無料となっている。

「以前は曲がりくねった道路を走らなくてはなりませんでしたが、真っすぐに行けるようになり、時間短縮と安全性が高まりました。国土交通省の発表によると、福島市と米沢市の間の交流人口が以前に比べて1・5倍になりました」

仙台空港からの集客にも期待

東北中央道の開通は3市の観光客誘致に大きな効果をもたらしているが、この面でも3商工会議所はお互いに協力し合っているという。「3市の商工会議所が連携して、観光ドライブマップを作成しました。また各商工会議所が毎月発行する所報には、ほかの2市の観光イベント情報もそれぞれ掲載しています。これまで東北中央道の建設推進のために、3市の商工会議所で37年以上にわたり協力し合ってきたので、お互いの連携は非常にスムーズです」と渡邊さんは自信を持って語る。

同所では、震災前の2010年から毎年春に、市内の飲食店でお得にランチを楽しめる期間限定の「ランチで食う(クー)ポン」を発行している。「今までは地元の人の利用がほとんどだったのが、相馬と米沢の商工会議所にご協力いただいてクーポンのチラシを置くようにしたら、両市からの利用者が大幅に増えました。これは今までなかったことです。逆に福島市からは、米沢らーめんを食べに行ったり、相馬に海水浴に行ったりする人が増えました」

観光イベントの面では、今年6月に『東北絆まつり』を福島市で開催することが決まっている。これは震災の犠牲者の鎮魂と復興を願い、東北6県の県庁所在地の夏祭りを一堂に集めて行うもので、以前は『東北六魂祭』という名称で、各市が毎年持ち回りで開催していた。それが一巡し、2巡目からは現在の名称に変わり、今も続けられている。東北の夏祭りが1カ所で全部見られるため、毎年大勢の観光客でにぎわっている。

「インバウンドの面では、台湾や東南アジアの観光客が増え、ようやく震災前とほぼ同じになりました。宮城県の仙台空港には多くの国際定期便が来ており、東北中央道が開通したことで空港とのアクセスが良くなるので、そちらからも集客できるよう、さまざまな観光メニューをつくっているところです。来年のオリンピックでは、聖火リレーが福島県からスタートし、野球とソフトボールの試合の一部が福島市で行われるので、それにも期待しています」

米沢商工会議所 吉野徹 会頭 

道の駅の来客数が予想以上に

山形県米沢市は、震災の直接的な被害は少なかったものの、ほかの地域と同様、観光客の数は激減した。しかし、東北中央道の開通で、状況は一変したという。「震災前の観光客数は年間約300万人でしたが、震災後は250万人にまで落ち込みました。しかし、東北中央道が開通すると、昨年4月から6カ月間の観光客数が240万人を超え、前年比160%以上となりました。年間にすると震災前の300万人を大幅に超えると思われます」と、米沢商工会議所会頭の吉野徹さんは笑顔を見せる。また、米沢市を通る車両数が開通前に比べ33%増というデータもある。

「昨年4月にオープンした道の駅は、入館者数が10カ月で150万人。このままいくと当初の想定の2倍になります。来ている車も県外ナンバーが多く、福島県が約3割で次が宮城県、その次が関東で約1割です。米沢市は米沢藩上杉氏の城下町であり伊達政宗の生誕地でもあるので、大河ドラマで取り上げられることもよくあります。そのため、歴史を中心とした観光客誘致を長年行ってきました。そういった経緯もあり、東北中央道の開通は米沢市にとって大きなインパクトがありました」

米沢の魅力を発信したい

福島市と相馬市、そして米沢市でお祭りが開催される際には、お互いに特産品を持って行って会場で販売したり、米沢市からは火縄銃の鉄砲隊を派遣したりして、各地のイベントを盛り上げている。「福島市と米沢市は果物を、相馬市は海の幸を運んで販売しています。これからは米沢市から福島市、相馬市に観光に行く人も増えてくると思います。相馬市には、いちご狩りに出かける人が多くなっています。福島市までは車で30分なので気軽に遊びに行けます。東北中央道ができたことで、そういう交流が活発になってきています」

また来年度には、東北中央道の福島・相馬間が全線開通する予定。そうなれば仙台空港とのアクセスが良くなり、インバウンドの増加も期待できるという。「仙台空港から外国人観光客をこちらに呼び寄せるために、外国人の方も喜んでくれる南東北の観光ルートをつくろうとしています。それを一つの市だけでやるのではなく、魅力ある観光地を結びつけることが大事です。外国人観光客にとって県境など関係ないですから」

そして、協力するだけではなく、米沢市独自の魅力もつくり上げていかなければならないと考えているという。「日本国内の多くの観光地の中から米沢を選んで来ていただくためには、ここに来て満足いただけるまちの魅力を早くつくっていかないといけない。それがこれから重要になってきます」

相馬商工会議所 草野清貴 会頭 

企業誘致でも成果を上げる

福島県北部の沿岸部にある相馬市は、震災で大きな被害を受けた。現在の状況について相馬商工会議所会頭の草野清貴さんは「市の主要な産業である漁業はいまだ試験操業が続き、底曵(び)き網漁では震災前の2割弱しか漁獲量が回復していません。ですが、相馬市と福島市を結ぶ東北中央道の建設が急速に進んだことで、観光と産業の面でさまざまな効果が生まれています」と語る。 昨年3月に相馬・福島間が約60%開通し、福島市まで1時間弱で行けるようになった。昨年夏に原釜尾浜海水浴場が8年ぶりにオープンすると、大勢の海水浴客でにぎわった。「福島県中央部の中通りだけではなく、米沢市からも多くの方に来ていただきました。また企業誘致の面でも、いくつかの企業が進出してきてくれたという効果もありました」

相馬市は、沿岸部にあるため雪の日が少なく、スポーツツーリズムの面でも有利な点が多いという。「9コース81ホールあるパークゴルフ場は冬でも雪で中止になることがなく、山形県や宮城県、岩手県、北海道からも大勢来ていただいています。またサッカー場も5面あり、全国大会の常勝校である青森の高校サッカー部が毎年冬に合宿に来ていて、練習を見に来るお客さんも多い。今後はプロ野球のキャンプのように合宿を見に来る人が増えたらと期待しています」

クルーズ船の誘致を進める

相馬市には一千有余年の歴史を持つ神事「相馬野馬追」があり、毎年大勢の観光客が訪れている。「昨年には福島市のイベントに野馬追の騎馬12頭を派遣して、多くの方に喜んでいただけました。これからは東北中央道の開通を観光客誘致に結びつけるために、3市の連携をさらに強めていく必要があります」と草野会頭は言う。

相馬市としていま検討を進めているのが、相馬港に国内クルーズ船を呼ぶことだという。「寄港してもらっても観光で回る要素が少なかったのですが、これからは福島市や米沢市への観光と組み合わせることができる。また、仙台空港からの観光バスがその先の福島市に行く前に相馬市にも立ち寄ってもらえる工夫も考えています」

東北中央道は、来年度までには相馬市から米沢市まで全線開通する予定で、そうなれば3市間の交通がさらに便利になり、観光面でより大きな発展が望める。この3商工会議所の連携が、それを確実なものとしていくことだろう。「3市の商工会議所はこれまで37年以上にわたり連携しており、職員同士も気心が知れているので、とても心強い。歴代の会頭が交流を絶やさずにしてきたことが、いま実を結ぼうとしています。これからも3市が協力して、さらに発展させていきたいと考えています」

会社データ

名前:福島商工会議所

所在地:福島県福島市三河南町1-20コラッセふくしま8F

電話:024-536-5511

HP:http://www.fukushima-cci.or.jp/

会社データ

名前:米沢商工会議所

所在地:山形県米沢市中央4-1-30

電話:0238-21-5111

HP:http://www.ycci.or.jp/

会社データ

名前:相馬商工会議所

所在地:福島県相馬市中村字桜ケ丘71

電話:0244-36-3171

HP:http://www.somacci.com/

※月刊石垣2019年3月号に掲載された記事です。

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