英ノッティンガム市の挑戦
イギリス中部にある人口約30万人のノッティンガム市を事例として、複数の中心市街地の性格および集積状況を見てみよう。
ノッティンガム市が策定した都市計画マスタープランでは、その上位目的に持続可能な社会が掲げられ、都市計画と交通政策の統合、大規模中心市街地および中心市街地の活性化が重点施策として盛り込まれている。
その内容は極めて包括的で、各施策がよく調整されているが、何より、絵に描いた餅ではないことが重要である。 同計画に盛り込まれている施策は、長期戦略、持続可能な地域社会、経済的繁栄、大規模中心市街地、都市計画と交通政策の統合、住宅、経済開発と雇用促進、再活性化と用途の混合利用、買物および中心市街地、レクリエーションとレジャー開発、地域インフラ、医療、教育、物理的環境、自然環境、交通である。
同都市計画マスタープランでは大規模中心市街地としてノッティンガム中心部を指定し、階層性で下位に位置する中心市街地として、バルウェル、クリフトン、ハイソン・グリーン、シャーウッドの4カ所を指定している(下図参照)。
公共交通網で拠点結ぶ
多核型のコンパクトシティを形成するためには、地域拠点間を結ぶ公共交通網の整備が不可欠である。ノッティンガム市は中心市街地間を結ぶ公共交通網の整備、特にトラム路線の整備に力を入れてきた。大規模中心市街地は公共交通の結節点で鉄道駅およびバスセンターがあるが、2004年に新たに中心部から北部郊外に延びる14㎞のトラム路線を敷設している。総延長14㎞、25の駅、郊外部の駅には6カ所のパーク・アンド・ライド駐車場(約3200台)がある。さらに現在、中心部から南部の中心市街地であるクリフトンに延びる7・6㎞のトラム路線を建設中である。
テスコの出店申請却下
ノッティンガム市の大規模中心市街地に指定されている市中心部は、市役所を中心に、行政機能、商業機能、文化機能、公共交通機能が集積している。また、中心部には大規模ショッピングセンターが南北に2つ配置され、その間が歩行者専用区域のモールあるいはアーケードで結ばれている、典型的な2核1モールの中心市街地である。北側のビクトリア・ショッピングセンターは売場面積8 万8258㎡、南側のブロードマーシュ・ショッピングセンターは同4万1806㎡(13万6000㎡に拡張予定)である。
2つのショッピングセンター間の距離は650m、中心市街地の面積は172・25ha、売場面積の総計は4万3620㎡(2002年データ)である。中心地点の歩行者通行量は土曜日で7万7364人(2005年)と極めてにぎやかである。中心市街地の全国ランキングでは上位の6位にランクされている。中心市街地のコアの買回品小売業は529店、最寄品小売業が78店、サービス業が332店、合計売場面積は4万831㎡である。
なお、2011年に中心市街地のすぐ外側に出店申請があった最大手スーパーのテスコ(売場面積8100㎡)は中心市街地への影響が大きすぎるとして、ノッティンガム市はこの出店申請を却下している。
横森豊雄・関東学院大学教授
最新号を紙面で読める!