一見すると、和菓子の最中のよう。一つずつ丁寧に包装された様子も上品でおいしそうだ。しかし、中に入っているのはアンコではない。ネギやワカメやほうれん草、ナメコ、そして小さな麸(ふ)が数枚、まるで万華鏡のように散りばめられている。小花麸、ゆり麸、まつたけ麸……、形も色もさまざまで可愛らしい。汁椀に添付の昆布出汁(だし)と最中を入れて、熱湯を注げば極上の汁物が出来上がり。ふやけた最中の中から麸や野菜が出てきて、椀の中が一気に華やかになる。おすまし、味噌汁(田舎みそ、赤だし、白みそ)、コンソメスープ、中華スープ。汁の味も和洋中がそろい、毎食どれを食べようかとワクワク楽しみに包みを開く。
これらは金沢・不室屋の「宝の麸」。脇役になりがちな麸が主役となった古都の名物である。手土産にも贈り物にもぴったり、味・彩・ときめき度どれも満点の“食遺産”と断言できる。
もうひとつ、金沢ならではの麸である「すだれ麸」もおすすめだ。治部煮(じぶに)に欠かせないギザギザの麸で、加賀藩前田家の包丁侍(ほうちょうざむらい)だった舟木伝内包早(ふなきでんないかねはや)が生み出した。舌触りが独特でクセになる珍しい麸。金沢に出かけたらぜひ麸料理を召し上がれ。
Data
社名:加賀麩 不室屋 尾張町店本店
所在地:石川県金沢市尾張町2-3-1
電話:0120-26-6817
Information
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