わが国経済は、過去20年以上にわたり物価、賃金、生産性がほぼ横ばいという停滞が続いてきた。現下のエネルギー・原材料価格の高騰、人手不足の深刻化といった内外の環境変化を契機に、わが国経済を停滞から成長へと転換させ、多くの人が豊かさを実感できる社会の実現につなげることは経済界の責務でもある。
このためには、新たな付加価値の創造による「成長」と、公正・適正な取引や賃上げを含む人への投資による「分配」の好循環の実現が不可欠である。
この観点から官民挙げて推進している「パートナーシップ構築宣言」は、サプライチェーン全体での成長と分配の好循環を目指すものとして極めて重要な取り組みである。
しかしながら、宣言企業数は増加しているものの、昨年末の公正取引委員会や中小企業庁の調査結果で浮き彫りになったように、宣言の趣旨が自社調達部門等の取引現場に十分に浸透していない企業があるのが実態であり、宣言の実効性向上が急務である。
ここに経済3団体として、それぞれの会員企業に宣言の拡大を呼び掛けるとともに、特に以下の点に留意しつつ、経営者自らが先頭に立って宣言内容の実行と社内や取引先への周知・徹底を図ることで宣言の実効性向上に万全を期するよう要請する。
1.「パートナーシップ構築宣言」の積極的な宣言・実行・見直し・普及
・ 「パートナーシップ構築宣言」について、積極的に宣言・公表を行うとともに、実行とフォローのための社内体制を明確にし、確実な実行を図る。併せて、下請中小企業振興法の振興基準や、社会・経済情勢の変化を踏まえ、不断に内容を見直す。
・ 上記の宣言・実行・見直しについて、直接の取引先を通じてその先の取引先へ働き掛ける(「Tier N」から「Tier N+1」へ)ことにより、実効性確保と社会全体への浸透を図る。
2.公正・適正な取引の徹底
・ 「パートナーシップ構築宣言」の趣旨および自社の宣言内容について、自社調達部門等の取引現場への浸透徹底を図るとともに、取引先に明示する。
・ 受注側企業におけるコスト(労務費、原材料費、エネルギー価格等)上昇分について、積極的に価格協議に応じるとともに、取引対価へ円滑に反映する。
・ 対価の支払いにおいて、約束手形の利用をできる限り廃止するとともに、現金により支払うよう努める。また、物品等の受領後、できる限り速やかに支払いを行う。特に下請取引においては、60日以内の支払いを徹底する。
3.サプライチェーン全体の成長に向けた取り組み
・ 商品・サービスに対してサプライチェーン全体で付加価値向上を図るとともに、適正な価格で最終消費者に提供することについて理解を得られるよう啓発を行う。
・ パートナー企業との連携により、サプライチェーン全体の付加価値向上と企業単体の取り組みでは解決できない社会的課題の解決に向けて、積極的に挑戦する。
・ 自社の属する業種・業界・サプライチェーンにおける課題を適切に把握するとともに、業界内においてよるべき優良な取引慣行について体系的な改善サイクルの確立を図る。
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