コロナ禍の2020、21年に2年連続で減少した在留外国人数(特別永住者を含む)が急激に回復し、昨年末時点で過去最高の341万人に達した。22年末比では10・9%増。今年末には370万人に達し、人口の3%が外国人になる可能性が高い。振り返ると、13年に日本人(日本国籍)の人口は1億2570万人だったが、23年には1億2119万人と10年間で451万人減少した。これに対し、同時期に外国人の人口は134万人増加、日本の急激な人口減を緩和する形となった。
日本のメディアは、アジア系にとどまらず、米欧系のインバウンド観光客の急増に目を奪われているが、為替が円安から円高に一気に振れ、米国景気が急減速すればインバウンドは一気に萎(しぼ)むリスクがある。中国人観光客の回復ペースは、中国経済の低迷長期化により予想通り鈍いからだ。
日本の中小企業は、着実に増加して日本社会で存在感を増す在留外国人と、真剣に向き合う時だろう。雇用面では技能実習生に目が向きがちだが、介護、建設、宿泊、漁業、外食業など12分野で認められた特定技能による在留者は昨年4万人以上増加、さらに経営・管理や研究などの高度専門職に就く人も大きく増えた。新たに日本に長期滞在を始める外国人は、明らかに人材の幅が広がっている。
留学生も着実に増えてはいるが、多数派の中国からの留学生は様相が変わりつつある。コロナ禍前までは家庭が裕福で潤沢な仕送りをもらう学生が多かったが、今はバイトで生活費を稼ぐ中国人学生が増えている。両親の経済的余裕がなくなったことが見て取れる。バイトもかつては中国人富裕層向けのインバウンド旅行手配、免税店など中国語を使える割のいい仕事があったが、最近はコンビニ、外食産業などに戻り、卒業後の就職も日本という学生が増えた。
外国からの高度人材、留学生を企業の重要な戦力として定着させるとともに、新たな顧客層として捉えていくべきだ。日本人のみでは平均年齢がほぼ50歳だが、在留外国人は統計がないものの平均で30歳代と見て間違いないだろう。日本の人口の3%を占め、若く、消費性向も高めの在留外国人を潜在顧客と見ない企業は、勢いを失う。
英国のスナク政権は不法移民をルワンダに送致する法案を成立させるなど、欧米では移民問題が社会問題となっているが、日本はそこまでではない。むしろ在留外国人と前向きな関係を構築することで、高齢化対策や経済活性化策に活路も見えつつある。
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