トランプ氏が年明けに米大統領に返り咲く。国務、国防、国家情報の各長官人事やウクライナ、不法移民に関する発言を見れば、経済、外交、内政はバイデン政権とは大転換し、想定外の連続となりかねない。アジアでは米中対立の激化は当然として、乱気流が吹き荒れるのは間違いないだろう。日本の中堅・中小企業が見るべきポイントは四つある。
第1は、米国の関税問題。トランプ次期大統領は中国からだけでなく、全ての輸入に関税を積み増すと宣言した。米国の小売業、製造業は多くを依存するアジアからの駆け込み輸入に動いているが、関税引き上げで物価上昇の波が押し寄せれば、米国民による政権批判は高まる。トランプ次期政権は第1期の対中関税引き上げの際と同じく、適用除外や税率引き下げの品目を設けるなど、現実的対応を必ず取ると思われる。性急に動くのではなく、動向をしっかり観察して動くべきだ。
第2は、米中対立。トランプ氏は対中貿易赤字に直接の怒りをぶつけているが、第1期の後、バイデン政権にも引き継がれたのは競争相手としての中国への警戒心であり、第2期でも中国の競争力を落とすことに全力を挙げるだろう。習近平政権が譲歩しても米中対立は緩和せず、トランプ2・0以降も長く続く。とすれば、日本企業は中国市場での販売、国内向け生産は維持しても、輸出を伴うグローバル生産拠点の「脱中国」は進めていかざるを得ない。
第3は、東南アジアの米中勢力図の転換。中国の東南アジアへの外交戦略、投資攻勢と対照的なバイデン政権の東南アジアへの関与の薄さによって、ミャンマーはもとよりタイ、マレーシア、インドネシア、さらには反中機運の強かったベトナムも、中国になびいている。問題は中国企業の東南アジア進出ラッシュで日本企業が押されていることと、東南アジアからの対米輸出品がトランプ次期政権で、中国からの迂回(うかい)輸出と認定されるリスクが高まることだ。東南アジアの拠点では中国からの原料、中間財を減らし、現地調達率を早急に高めることが、グローバル市場向け輸出で必要になるだろう。
第4は、インドの活用。先月の本欄でも指摘したが、そろそろインドでの生産を本格的に検討すべきだ。トランプ次期大統領はモディ首相との相性は別として、インドを対中カードとして積極活用する。インドは日本企業にとって、グローバル市場向け生産拠点として政治的にも好適地となる可能性が高い。
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