第20回アジア競技大会が9月19日〜10月4日、第5回アジアパラ競技大会が10月18〜24日、愛知県名古屋市などで開催される。国内製造業の一大拠点として知られる東海地区には、自社の培ってきた自慢の技術を転用しスポーツ分野にも領域を広げている企業もある。そこで、熱戦が期待される同大会に負けない東海地域のものづくり企業の熱い思いを届けたい。
漁網発の繊維技術をゴールネットに応用 インフラを支える複合素材企業へ
漁網づくりを原点に、サッカーゴールネットなどのネット製品からFRP(繊維強化プラスチック)製品、下水道管の更生材料へと事業を広げてきた、福井ファイバーテック。海外勢との価格競争で市場を失いながらも、撤退と再起を重ね、常に次の柱を育ててきた。
六角形のゴールネットから社会を支えるFRP製品へ
福井ファイバーテックが長年手がけてきた製品の一つに、サッカーのゴールネットがある。
「FIFAワールドカップ2026」でも目にした、編み目が六角形のゴールネット。現在では世界的に広く使われているが、四角形が当たり前だった国内で、いち早く実用化したのが社長の福井英輔さんだ。四角形より強度が高く、ボールの衝撃で編み目が開くため、シュートが決まった瞬間に独特の“間”が生まれるという。1995年にジュビロ磐田スタジアム(当時)で採用され、2002年の日韓ワールドカップでは国内全会場で使われた。
しかしその後は、安価な中国製品に市場を奪われ、スポーツ用ネットの売り上げは現在、全体の1~2%にとどまる。それでも福井さんは、既成概念にとらわれず生み出したこの製品を「ものづくりの象徴」として大切にしている。
同社の原点は、1905年に始めた漁網づくりにある。50年代には世界数十カ国へ輸出し、60年代にはドイツ製高速ラッセル編網機を日本で初めて導入した。「新しい技術をいち早く取り入れるチャレンジ精神は、創業時から受け継がれています。他社が敬遠する難しい製品でも、『うちならできる』と引き受けてきました」と福井さんは振り返る。輸入品との競争が激しくなる中、編む技術を産業用ネットや複合材料へ広げてきた。
80年代には、家庭用カーペットを新たな柱に育てる一方、将来を見据えてFRPの研究開発も進めていた。その後、カーペットは中国製品との価格競争にさらされ、海外工場の閉鎖を含む事業整理を迫られたが、FRPの研究開発費は削らなかった。
「大きな賭けでしたが、研究開発を続けたからこそ、いまの量産技術が育ったと考えています」。試作と改良を重ねて培った技術は、現在の主力事業へと成長した。
