「3年たったら転職するつもりなんです」――。今春、学生に大人気の大手コンサルティング会社に新卒で就職をした女性は入社前からそう話していた。給与水準が高く、友人に自慢できる勤務先でも「長く働き続ける考えはない」と言うのだ▼
一方で、ある大手シンクタンク企業は「新卒は採用しないことになっている」(中堅幹部)という。経験を積んだ社会人を迎えた方が、クライアントが求める成果を短期で出せると判断したためのようだ。「石の上にも3年」との考えに基づく新人教育は、もはや通じないと言っていいだろう▼
だが、前向きな理由でなく、職場になじめず、転職を繰り返す例も少なくない。「結局、コミュニケーション能力がものをいう」と転職あっせん企業の幹部は指摘する。新しい事態に直面すると、最近はまずAI(人工知能)に頼る若手が多い。取引先相手や社内でのやりとりの場合、メールの返信ならAIの助けを借りることもできる。しかし面談している最中に、受け答え方をスマホでAIに尋ねるわけにはいかない。チームでプロジェクトを進めるには周囲に助力を仰ぐ必要もあろう。「分かりやすい言葉で伝えられるかが大事。できないとたちまち孤立し、居場所を失って自主退職するケースが多いと聞く」とこの幹部は話す▼
転職組を受け入れる際、コミュニケーション能力に問題がある人材を採用すると同僚が苦労する。そう考えて入念に面接を行い、採用を回避すべきか。他の能力が優れているのなら、周囲が支援する態勢を取り、あえてさまざまな人材を受け入れるべきか。新卒よりも転職が当然とされる時代が到来している今、企業の姿勢も改めて問われている
(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)