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テーマ別企業事例 今後ますます拡大 アクティブシニア市場を開拓せよ!

事例3 いつも、そっと大切な人を見守る

M2Mテクノロジーズ(和歌山県和歌山市)

少子化・高齢化・核家族化が進む現代で急増する独居高齢者や高齢夫婦。その日常を遠方からでも見守ることができるよう開発されたサービスが「絆―ONE」。これは、人感センサーで、居間などでの人の動きを24時間監視し、日々の生活を見守ってくれる。ボタン通報器で日ごろの連絡や緊急時の通報なども可能だ。今、全国の自治体からの注目を集めているこの〝見守りサービス〟の現 状と今後の展望を探った。

一定時間以上動きが無い場合や、緊急ボタンが押されたら、すぐにコールセンターが対応して安否を確認。その結果は、登録されている緊急連絡先にメールで知らされるシステム

自社技術を生かせないか?

社名のM2Mは、マシン・トゥ・マシン、機械間通信を意味しています。〝センサー〟で得た情報を〝クラウド〟に保存・管理して、そこでまとめたデータを顧客の用途に応じて再配信し、サービスにつなげる事業を展開している会社です」と説明してくれたのは、社長の竹迫一郎さん。同社は平成23年に東京で設立された。創業メンバーの一人の体験から、離れて暮らす高齢者の見守りサービスに同社のシステムを生かせないだろうかと、その実証試験を和歌山県西牟婁郡白浜町で開始したのは、同年10月のことだった。それが縁で、和歌山県からの企業誘致を受け、翌24年4月に和歌山市に移転した。以来、和歌山発のベンチャー企業として名を馳せ、さまざまな賞を受賞、県や市からの補助認定も受けている。

「もともと、私は機械製造でM2Mと組んだ住友精密工業の人間なんです。そこから出向して、社長になったのは25年の1月です」と語る竹迫さんに、会社としての成長の軌跡を語ってもらった。

「23年度の売上は1700万円、24年度が3700万円、25年度は5000万円、そして第4期の26年度は7000万円から8000万円の間でしょう。増収減益です。本来なら、今ごろは5~6億でないといけないのですが、なかなか思惑通りには進んでいません」

今後、高齢化が進みニーズは高まるはず

本格的に「絆―ONE」システムの提供を開始したのが、25年の7月ころからだから、数字として具体的に成果が見えてくるのは、これからのことだ。とはいえ、着実にその輪は広がっている。

「昨年度は、和歌山の印南町、北海道幌加内町、鹿児島県の日置市で導入してもらい、今年度は奈良県の東吉野村、鳥取県の日南町と日吉津村がすでに決定しています」。また、神戸市の第三セクター「新長田まちづくり」でも、震災20周年に合わせて導入してくれることになったとのことだ。

総務省が今年2月に発表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は3334万人、75歳以上の高齢者も1600万人を超えている。さらに、厚生労働省によると、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年には、認知症を患う65歳以上の高齢者が最大で、730万人に達するという。つまり、見守りシステムに対する需要は今後、ますます大きくなっていくはずだ。

「サービス付きの高級な高齢者用住宅は、今現在、着工済みも含めて全国で35万戸だといわれています。政府は2020年までに105万人もの高齢者住宅建設を進めるように言ってはいますが、そこからこぼれる多くの人たちに自分の家で生活してもらうためのシステムづくりが急がれているのです。また、1718の市町村(26年4月時点)のうち、65歳以上の高齢者が3割を超えている市町村は600以上にも上っています。そうした中で、見守りシステムの潜在的ニーズは確実にあります」

では、なぜ「思惑通り」の伸びを見せていないのだろうか。そこには「受益者負担」の壁があると竹迫さんは言う。

「今、導入していただいている自治体も、受益者負担に関してはバラバラです。国からの補助を受けているところでは、無料のところもありますし、利用料をお願いしているところもあります。個人での利用は、サービスや環境によっても違いますが、大体、3000円前後といったところです」

 ただ、その壁も次第に薄くなっているという。竹迫さんからすれば、「昨年の10月ごろから風向きが変わってきたような気がします」。その大きな理由は、安倍政権が打ち出している「受益者負担」の考えと「民間活用」の政策のおかげだという。

限界集落対策としても注目

実際に「絆―ONE」を導入している岩手県西和賀町のケースを例に取って、そのシステムを説明してみよう。ここは24年4月の導入で、先駆者的意味合いも持つ。

人口は約6400人、高齢化率は43%、独り暮らし324人の典型的な過疎と独居高齢化が進むまちで、やがては限界集落の仲間入りが予想されている地域だ。

見守り対象の家に設置された「人感センサー」が人の動きを感知し、その結果をクラウドシステムに集約する。また、「押すだけボタン」装置で、緊急コールセンターや自治体、遠方の家族との連絡、さらにヤマト運輸と連携して宅配、配膳などの依頼や手配ができる。社会福祉協議会と運輸会社、利用者が三位一体となって、独り暮らしの高齢者を見守り、生活支援を総合的に展開しているのだ。

「わが社以外にも、緊急見守りシステムの立山システム研究所、今年1月にALSOKへの譲渡が発表になったアズビルあんしんケアサポートと、見守りサービスをやっているところはあります。1社や2社が独占・寡占することはあり得ない市場だと思います。ある程度のアカウント数が確保でき、社会インフラとして認知してもらえればと考えています」。確実に近付いている超高齢化社会。そんな社会の中で、「絆―ONE」は〝安心〟を実感させてくれる。将来、見守りシステムは、あって当たり前の社会インフラとなっているかもしれない。

会社データ

社 名:M2Mテクノロジーズ株式会社

住 所:和歌山市黒田1-1-19 阪和第一ビル4階

電 話:073-499-6422

代表者:竹迫 一郎 代表取締役社長

従業員:20人(常駐)

※月刊石垣2015年4月号に掲載された記事です。

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