わが国経済はアベノミクスの成果が現れ、総じて緩やかに改善している。さらに、「成長する経済」の実現に向けて、安倍内閣総理大臣が改めて経済最優先の政策運営を表明されたことを歓迎する。
改造内閣は、本方針を徹底し、足腰の強いわが国の経済基盤を構築すべく構造改革を実行し、その成果をもって国民の信頼を高めることが重要である。国民や企業の中に漂う将来不安を払しょくし、成長する経済を実現するためには、一部の人には痛みを伴う政策でも、オープンな議論の下、丁寧な説明により国民の総意を形づくり、改革を断行する必要がある。
わが国の最重要課題は、0.8%に過ぎない潜在成長率を高めることである。資本蓄積、労働力投入、生産性向上を推進し、外的ショックに耐性のある強い成長エンジンを構築しなければならない。
同時に、成長の果実を全国津々浦々にまで届けるためには、地方創生が不可欠であり、その早期実現の鍵である自治体と経済界、地域間などの緊密な連携を後押しされたい。
また、潜在成長率の低下や地方の疲弊の根本的な原因である、人口減少対策が急務であり、あらゆる施策を総動員して、人口減少トレンドを変えなければならない。
さらに、東日本大震災からの本格復興、福島再生、熊本地震からの復興への継続的な支援とともに、今夏の大雨による九州、東北などの被災地の復旧・復興に万全を期す必要がある。
これらの基本的な考え方の下、改造内閣におかれては、以下の政策課題に早急かつ集中的に取り組まれたい。もとより、経済成長の主役はわれわれ民間企業であり、経済の好循環の実現に貢献するための自助努力が欠かせない。商工会議所としても、日本経済再生と地方創生の実現に向け、自ら行動するとともに、政府に対し最大限の協力を行う所存である。
1.わが国経済の成長力の底上げに向けたビジネス環境の整備
潜在成長率を高めるために重要なのは民間企業の積極的な活動である。政府は、企業活動を後押しする環境整備を迅速かつ強力に進めていただきたい。
ICT、IoT、ロボット、AIの活用支援など、未来投資戦略の着実な推進が必要である。その際、ICT化などの利便を高齢者や小規模事業者などを含む社会全体が享受し、わが国経済の成長力の底上げにつなげていくことが重要である。加えて、国内投資機会の拡大に資する規制改革の断行、行政手続きの簡素化の推進を通じた生産性向上も徹底する必要がある。
また、中小企業の最大の課題である人手不足の克服には、女性や高齢者、外国人など多様な人材の活躍推進に向けた方策の検討・実行や、中小企業の実態を踏まえた働き方改革の推進とともに、企業が自社の従業員の健康づくりに主体的に取り組む「健康経営」を促進していくことが求められる。
さらに、7月に大枠合意した日EU・EPAは、グローバルな貿易・投資のルールづくりを主導する重要な枠組みであり、11カ国でのTPP早期発効や、RCEP、日中韓FTAといった他の広域経済連携の高い次元での協定締結につなげていくことが重要である。
2.地方創生の早期実現と中小・中堅企業の活力強化
地方創生の実現には、観光振興と農商工連携の推進が重要である。地域資源や農林水産資源の活用、地域中小企業の製品・サービスの高付加価値化を加速させるとともに、交流人口拡大・投資誘発・防災などに資するストック効果を重視した社会資本整備などが必要である。
また、地域経済の底上げのためには、主役となる中小・中堅企業の活力強化が不可欠である。多くの経営者が引退期に直面する「大事業承継時代」を迎え、円滑な承継を可能とする税制措置の抜本的拡充をはじめ、早期・計画的な事業承継の取り組みの後押しが必要であり、さらには、創業・第二創業支援も重要である。
加えて、2020年東京オリンピック・パラリンピックの経済効果を地方・中小企業に一層波及させる取り組みが必要である。大阪・関西における2025年国際博覧会の誘致も、強力に推進すべきである。
3.人口減少対策の加速化と社会保障制度改革の断行による将来不安の払しょく
わが国の構造的課題である人口減少に対し、国民や企業が抱える将来不安の解消に向けて、政府は真正面から直ちに取り組むべきである。
歳出の柱である社会保障給付の重点化・効率化はもとより、高齢世代から現役・子育て世代への大胆な資源の再配分、高齢者の応能負担割合の引き上げなど、給付と負担の両面から思い切った社会保障制度改革を断行する必要がある。2019年10月の消費税率引き上げの確実な実行と、そのための環境整備を行うことは当然である。
(8月4日)
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