米国の経済誌『フォーチュン』が毎年発表するグローバル企業の売上高500社ランキング「フォーチュン・グローバル500」の2020年版の国・地域別ランクイン企業数で中国が初めて、米国を抜いてトップに立った。中国が124社、米国が121社だ。「米中冷戦」が激化する中で、中国の意気はさぞ上がったことだろう。3位は日本53社、4位はフランス31社、5位がドイツ27社、6位が英国、韓国、オランダで各10社、9位が台湾とスペインでともに9社、その後にインドが7社で続く。
グラフは1995年から2020年までの日本、米国、中国のランクイン企業数の推移である。奇しくも1995年は日米がともに148社で首位に並んだ。円が対ドルで最高値を付けた年であり、円高の影響は大きいが、その後の日本企業のランキングの低下には「日本産業界の落日」を感じざるを得ない。米国も2002年の196社をピークにランクインする企業数は減り続けており、トランプ大統領が「産業の国内回帰」を盛んに主張する背景がみえる。
中国の躍進は言うまでもない。ランクイン企業が2桁に乗ったのは01年だが、そこから一気に駆け上り、12年に日本を抜き、遂に今年、米国も抜いた。北京に駐在していた90年代末、中国の大手企業トップにインタビューすると決まって口にしたのが「フォーチュン500社ランキングに入る世界的な企業になりたい」という決意だった。今や世界最大のパソコンメーカーとなったレノボの楊元慶CEO、白物家電世界トップのハイアールの張瑞敏CEOも同じように語った。中国企業にとって「フォーチュン500社」は夢であり、そこに向かって疾走してきた四半世紀だっただろう。中国の夢は実現した。
だが、その結果、米国の対中警戒心を高め、妬みを招き、中国バッシングに向かわせた。今年のランキングで中国はトップ10のうち2、3、4位を占めたが、振り返ると1995年のトップ10は1~4位が日本の総合商社だった。日本は米国の「虎の尾」を踏み、貿易摩擦はもちろん知的財産紛争など日本バッシングを招いた。日本と中国が対米関係で同じ轍(てつ)を踏むとは限らないが、「出る国は米国に打たれる」という原理を中国は意識すべきかもしれない。
一方、東南アジアの企業は4社しか入っていない。それも国営エネルギー会社などで、グローバル市場で成功する民間企業は少ない。東南アジアの民間企業にも「フォーチュンの夢」が必要だ。
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