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テーマ別企業事例 パラアスリートを支える“応援企業”が元気な理由がある

事例2 「練習=業務時間」とみなしてボッチャの第一人者を社員に採用

フォーバル(東京都渋谷区)

東京渋谷区に本社を構え、関東、中部、関西、九州地区、そして東南アジアにも拠点を置いて事業を展開

次世代経営コンサルタント集団、フォーバルが2018年2月、パラリンピック正式種目であるボッチャの高橋和樹選手を採用した。高橋選手は、ボッチャの日本での第一人者であり、20年に開催される東京パラリンピックの日本代表候補者の一人として注目を集める人物だ。コンサルタント会社がなぜパラアスリートを採用したのか、その目的に迫った。

通勤なし、業務なし競技に100%全力投球

ボッチャは、重度脳性麻痺者や同程度の四肢重度機能障がい者のために、ヨーロッパで考案されたスポーツで、1984年のパラリンピックで初めて公開されている。だが、日本では、97年に日本ボッチャ協会が、2014年に日本ユニバーサルボッチャ連盟が設立されるなど、歴史はまだ浅い。

「先の平昌冬季オリンピックで日本のカーリング女子チームが史上初のメダルに輝いてカーリングが認知されたように、ボッチャも知名度が高まればうれしいと思います」

そう言って、フォーバルの管理本部人事部部長、貞苅毅さんは笑った。フォーバルでは仕事以外のコミュニティー活動も盛んで、野球部やフットサル部、ボルダリング部など多様な社内クラブがある。貞苅さん、そして人事部採用課担当課長の櫻井景さんは、ボッチャ部を立ち上げたいと意気込む。

こうした流れは、18年2月、同社がボッチャの高橋和樹さんを採用したことから生まれた。11年にはビーチバレーボールの朝日健太郎選手を採用した経緯があり、朝日選手率いる実業団バレーボールチームの「フォーバルボンズ」も誕生しているといった土壌があるため、社内のボッチャへの関心度も高い。

また、高橋選手の待遇もアスリート目線ともいえる手厚さだ。競技に専念できるように、本業であるコンサルタント業務に携わることなく、毎日通勤する必要もない。高橋選手の職場はボッチャの練習場であり、大会会場だ。同社のロゴが入るウエアを提供しているが、競技にかかる諸経費にはノータッチ。社員として月給を支払い、それをどうやりくりするかは高橋選手にかかっている。それでもパラアスリートにとって月々安定した収入が約束され、競技に専念できるのは、心身ともに負荷のかからないベストな環境といえる。

企業もアスリートも問題解決をサポートしたい

だが、経営コンサルタント会社が、なぜアスリート雇用をしているのか。一見、両者の接点が見いだせないが、「コンサルタント会社だからこそ」と貞苅さんは説く。

同社は1980年に創業者、大久保秀夫さん(現、代表取締役会長)がわずか8人で創業し、中小企業を対象とするビジネスフォンやOA機器の販売によって急成長してきた企業だ。インターネットの普及で「モノ売り」から「コト売り」にシフトし、機器のメンテナンスサービスにとどまらず、アイコンサービスとしてよろず経営相談へと領域を広げる。現在は情報通信、海外、環境、人材・教育、起業・事業承継の5分野の売り上げ拡大、業務効率化、リスク回避をテーマに次世代経営コンサルティングを展開し、その顧客数は全国に約1万8000社を数える。

「単にモノを売るのではなくIT技術を生かして効果を検証した上で根本的な問題解決を提案しています。よろず経営相談サービスでは、無料のビジネスマッチングも展開していて、選ばれる企業になるにはセキュリティーや社員の質の高さが求められます。それらの向上を含めて経営者に寄り添い、全面的にサポートしています」(貞苅さん)

中小企業を元気にしたい。その根源は社会貢献でもあり、アスリート事業への参入も同義だというのだ。採用に関しては、朝日選手のときと同様、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」を活用している。これは日本オリンピック委員会が運営しており、朝日選手のときに東京商工会議所を通して協力依頼があってからのつながりだ。そして、就職先を探しているオリパラアスリートの情報をチェックする中、目に留まったのが高橋選手だった。その経緯について櫻井さんは語る。

高橋選手の競技姿勢が社員に波及効果を与える

「採用の決め手は、ポジティブの塊のような高橋選手の人柄です。子どもの頃から柔道を続け、将来有望な成績を出し続ける中、高校2年の夏に練習中の事故で首の骨を折り、全身の8割以上が麻痺する障がいを負ってしまいました。寝るとき以外は介助が必要な生活でありながら、障がいを受け入れ、前向きにボッチャに打ち込んでいる。その精神力とひたむきさに、可能性を感じました」

──可能性、それはメダル獲得だけではなく、社員の士気向上や団結力、一人一人のモチベーションアップなどの相乗効果などの多様な刺激を意味する。高橋選手の大会出場スケジュールは社内で共有されており、重要な大会には社員有志らが応援に駆け付ける。

「私も家族で応援しに行ったのですが、子どもが『高橋選手、頑張って』と声援を送ったんです。それが励みになったと、後で高橋選手がコメントしたときはうれしかったですね」(櫻井さん)

今春は、新入社員を前に講演もした。高橋選手は出勤こそしないが、毎月の活動予定を報告するようになっており、大会結果などもメールで届く。

「勝った、負けたというだけではなく、試合前の心境や勝敗の分析など、内容の濃いメールが届くことも。こうしたやりとりを介して、社員の一人であるという自覚、フォーバルとの信頼関係が育まれています」(櫻井さん)

「新しいあたりまえ」をビジョンに掲げ、社会価値創出企業を目指し続ける同社と、障がいに屈せずに、障がいに感謝の気持ちさえ持って競技に全力で打ち込む高橋選手。試合成績、パラリンピック出場権などの結果を超えて、両者が与え、得ているものは大きいようだ。

《東京パラリンピック競技日程(予定)》 ボッチャ 2020/8/29〜9/5(競技会場:有明体操競技場)

会社データ

社名:株式会社フォーバル

所在地:東京都渋谷区神宮前5-52-2青山オーバルビル14F

電話:03-3498-1541

代表者:中島將典 代表取締役社長

従業員:1815人(グループ全体)

HP:https://www.forval.co.jp/sp/

※月刊石垣2019年8月号に掲載された記事です。

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