「トップからダウンへの切り返しのタイミングが悪いみたいで、ボールが安定しない」。そんな声を耳にしたとき、そこに気付いたのはよいことだと答えています。トップからダウンへの切り返しは、第2のスタートと言われる重要なポイントなのですから。
昔、私も師匠の棚網良平先生に「切り返しの間がなく、間抜けなスイングだ」と、よく叱られたものです。当時は、打ち急いでいて、頭が突っ込みながら切り返していたので、〝間〟が悪かったのでしょう。間が悪いとリズムが生まれませんし、スイングプレーンも乱れます。さらに、タメやしなりが使えないので、スピード、パワー、ともにロスしますから注意したいものです。
間が悪いのに気付かないのは問題がありますが、何も考えずに切り返しができているのなら、それに越したことはないと思います。つまり、意識的に切り返すのではなく、一連の動きの中で切り返されているのが理想です。
では、どうしたら切り返しの“間”を手に入れられるのでしょう。まずはトップをよい位置に収めることが大事です。そこでトランプを1枚、右手の親指と人差し指でつまみ、右肩の後ろに投げてみてください。そこがトップの位置の目安になります。
また、アドレスした状態から誰かにクラブを跳ね上げてもらい、そのままスイングしてみるのもよいでしょう。跳ね上がったところからスイングすると、何もしないのにクラブが落ちてきます。それが正しい切り返しの感覚です。切り返しは重力によって自然に落ちてくるものなのです。
切り返しの“間”が悪いと、球筋は安定しません。「間」はときに「魔」にもなりかねないのです。
※1 棚網良平氏(1921〜2012年)は1960年の日本プロゴルフ選手権大会で優勝した。戦後の日本ゴルフ界を故中村寅吉選手、故林由郎選手らと支えた
※2 スイングのメカニズムを説明するために用いられる、スイングによってできる仮想の面のこと
イラストレーション:アカハナドラゴン
最新号を紙面で読める!