日本商工会議所の三村明夫会頭は10日、テレビ会議方式で開催された政府の「第3回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」に出席し、昨年末に政府が策定した「転嫁円滑化施策パッケージ」の着実な実行などを要請した。会議には、政府側から山際大志郎経済財政相、萩生田光一経産相、斉藤鉄夫国交相ら関係閣僚が、民間からは三村会頭のほか、日本経済団体連合会の十倉雅和会長、連合の芳野友子会長が出席。大企業と中小企業の共存共栄に向けたパートナーシップ構築宣言のフォローアップと今後の取り組みなどについて意見交換を行った。
会議の冒頭、山際経済財政相は、昨年11月に閣議決定した経済対策の中で「パートナーシップ構築宣言」の推進を盛り込んだことに触れ、「岸田内閣としてもしっかりと取り組んでいく」との考えを表明。また、宣言企業数が政府目標を上回り、6000社を超えたことなどを報告した。
萩生田経産相は、宣言企業に占める大企業の割合が1割程度にとどまっている現状を指摘。中小企業の賃上げ原資の確保や、エネルギー価格・原材料価格の上昇に対応するためにも、「大企業と下請中小企業との取引のさらなる適正化に向けて、五つの取り組みを実施する」と述べた。
具体的には、価格交渉転嫁の状況が良くない企業に対して、下請振興法に基づく助言・注意喚起をするほか、昨年9月に続き、今年3月にも「価格交渉促進月間」を実施。併せて、「下請振興法の『振興基準』を改正し、最低賃金の引き上げなどの外的要因がない場合でも、労務費上昇に伴う価格交渉に応じるよう親事業者に促す」考えも示した。
また、「パートナーシップ構築宣言」の宣言内容の実施状況調査の公表、下請Gメンのアドバイス機能強化、「業種別ガイドライン」「自主行動計画」の拡充・改訂、「知財Gメン」の創設と専門家による「知財取引アドバイザリーボード」の設置など対応強化策を提示。経済界に対しては、「宣言の拡大」「賃上げへの協力」を要請した。
三村会頭は、足元の中小企業を取り巻く環境について、日商の調査でコスト増加分を十分に価格転嫁できていない事業者が8割を超えた点に触れ、「賃上げのためには、生産性を向上させ、取引価格を適正化し、原資となる付加価値を増やすしかない」と指摘。そのためには、「パートナーシップ構築宣言」の実効性の強化が必要との認識を示し、「転嫁円滑化施策パッケージ」の着実な実行が必要との考えを示した。
また、萩生田経産相が提示した、知財を含む取引適正化に向けた「五つの取り組み」を高く評価。各府省庁や地方公共団体の「公共調達」における加点措置の創設や、宣言の進捗確認、成果把握を継続的に行っていくことの重要性も強調した。
また、下請取引の適正化に努めるとともに、親事業者に対しては合理的なデータを提示して価格協議している好事例を提示。「引き続き、官民挙げて、宣言企業の増加と、宣言に『心』を入れていく運動を展開したい」との考えを示した。
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