汗というと「臭いが気になる」「不快」などといったネガティブなイメージを持たれがちですが、健康を保つために極めて重要な生理現象です。
汗の大きな役割は体温の調節です。汗として皮膚の上に水分を出し、それが蒸発することで、気温の上昇や運動、発熱などで高くなった体温を下げます。また、緊張時に手のひらに汗をかくのは、手の感覚を鈍らせないようにして、戦いなどで有利にするためともいわれています。つまり、人間の生命維持に不可欠な働きをしているのです。
とはいえ、汗には良い汗と悪い汗があります。汗は血液からつくられ、血中のミネラルと水分が汗腺に取り込まれた後、体に必要なミネラルが血液に再吸収されます。サラサラした水分が皮膚から適量出てくるのが良い汗で、ほぼ無臭です。一方、汗腺の機能が低下してミネラルの再吸収が正常に行われないと、濃度の高いネバネバした水分が出てきます。これは悪い汗で、臭いもあります。また、必要以上に大量にかくのも悪い汗です。もし、日常生活で困ったり、邪魔になったりするほど汗が出るようなら多汗症が疑われます。
多汗症は、全身に多量の汗をかく「全身性多汗症」と、一部から多量の汗が出る「局所性多汗症」があります。いずれも原因不明のものがある一方、何らかの疾患があることも少なくありません。例えば、全身性多汗症では感染症や内分泌代謝異常(甲状腺疾患など)、神経疾患が合併していたり、局所性多汗症では外傷や腫瘍があったりする場合があります。また、原発性局所多汗症は基礎疾患なく手のひらや足の裏、脇など限られた部位から過剰に発汗する疾病です。わきがなど強い臭いを伴うときも社会生活で不都合が出る場合があるので、いずれにしても一度皮膚科に相談することをお勧めします。
このように悪い汗には対処が必要ですが、良い汗をかくことも重要です。毎日エアコンの効いた部屋で、体を動かさない生活を続けていると、自律神経のバランスが崩れ、汗腺の機能が低下してしまいます。適度な運動や入浴で汗を流すことを心掛け、体温調節を上手にできる体を維持しましょう。
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