長い期間、わが国はほとんど金利のない世界にいた。特に、日本銀行が“異次元緩和”を導入し、超低金利環境に拍車が掛かった。実質的に金利がゼロ=金利のない世界だった。ところが、最近、少しその状況に変化が出始めている。足元で、10年物国債の流通利回りは一時1・0%を超え、“金利のある世界”が現実味を帯びつつある。それに伴い住宅ローン金利が上昇するなど、今後、私たちの身の回りにもさまざまな変化が起きることが想定される。わが国では、“金利のある世界”に慣れていない人は多い。“金利のある世界”で、日常生活や企業の事業運営などにどんな影響があるか、準備を進めておく必要がありそうだ。
ここへ来て、わが国の経済環境はデフレからインフレ気味へシフトしている。その背景要因は複合的だ。世界的な人手不足で、賃金上昇ペースは依然としてコロナ禍前を上回っている。世界の企業にとって、人材確保に賃上げの必要性は高まっている。ウクライナ紛争や中東情勢などの地政学リスクを背景に、エネルギー資源や物流コストも増加した。中東の状況によって、エネルギー供給インフラが被害を受けるとの見方も強まり、欧州の天然ガス価格が上昇した。脱炭素やロシア制裁の影響で、銅などの価格も上昇圧力がかかった。これらの要因は、いずれも物価水準を押し上げている。
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