近年、生成AIの性能が著しく向上し、社会のさまざまな分野に浸透してきた。例えば、小中高生が学習中に知らない言葉に出会った際、彼らが「チャッピー」と呼ぶチャットGPTを操作してその意味を調べることができる。また、高齢者が健康や医療に関する情報を得る際にも活用されている▼
さて、この春、生成AI業界に衝撃を与えるニュースが米国から伝わった。AI開発企業のアンソロピック社が、「クロード・ミュトス」と呼ばれる先進的なAIモデルを発表したのである▼
これまでのAIは「文章を書く」「絵を描く」「コードを書く」などそれぞれの役割を個別に担うことが多かった。これに対し、このAIは利用者の指示を待つだけでなく、状況に応じて自律的に作業を進める能力を備えているとされる。特に関係者を驚かせたのは、人間の見落としていたソフトウエア上の脆弱(ぜいじゃく)性を自ら発見し、指摘した点である。しかも一つや二つではなく、主要なOSやブラウザなどから多数の欠陥を見つけ出したという▼
さらに注目されたのは、その公開方針である。このAIは強力な能力を持つ半面、悪用されれば金融機関や重要インフラへのサイバー攻撃に利用される懸念もあるため、一般公開は見送られ、限定的な組織にのみ提供されるという▼
今後、この生成AIは業務効率化や情報収集の面で大きな可能性を秘めている。その他の生成AIであるオープンAIのチャットGPTやグーグルのジェミニなどとの勢力分野の陣取り合戦が熾烈(しれつ)を極めると思われる▼
一方で、全てをAI任せにするのではなく、最終的な判断は人間が担う姿勢も欠かせない。便利な道具として賢明に活用していきたい
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)