自転車、自動車から宿泊施設までシェアリング・ビジネスがアジアのさまざまな都市で急拡大している。中国で米発祥の配車サービス、Uberを圧倒し、吸収した滴滴出行(ディーディーチューシン)の大成功は世界を驚かせたが、今、世界の経営学者、ベンチャーキャピタルなどが動向に深い関心を寄せるのは北京、上海をはじめ大都市で雨後のたけのこのように起業されたシェア自転車の動向だ。モノの所有志向が強いアジアで、シェアリング・エコノミーが成長する背景には経済の構造変化がうかがえるからだ。
北京や上海の地下鉄駅やオフィス街には黄、赤、青などに色分けされた自転車が乱雑に並んでいる場所がある。それぞれの自転車には契約者がスマホで顧客データを入れて解錠し利用できるシステムが装備され、利用は極めて簡便、迅速だ。大手のMobikeとOfoは数千万人規模の契約顧客を抱え、巨額の資金も世界から投資されている。Ofoは2017年末には中国全土に配備する自転車が2000万台を超えるという。
4、5年前からバンコクなどの市中心部で会員制のレンタサイクル、PUNPUNがあった。ここにきてステーションや自転車を増やし始めた。Mobikeは日本の福岡市に進出する計画を発表したが、東南アジアにも中国のシェア自転車会社が一気に進出する可能性がある。マレーシアで始まった「東南アジア版Uber」とも呼ばれるGrabは自動車、二輪車のシェアリングで、マレーシア、フィリピンなどで成長しており、昨年末、HONDAとの協業を発表した。まずは二輪車オーナーと乗客をスマホアプリでマッチさせる「バイクタクシーの配車」をインドネシアで展開する計画。一方、インドネシアでは地元のGo-Jekがバイクタクシーの配車をすでに運営しており、競争が激化する。
アジア全域でこうした配車サービスなどが急拡大する背景には公共交通機関の整備が遅れ、庶民の足が圧倒的に不足しているという状況がある。さらに深刻な交通渋滞で自動車よりもバイクタクシーの方が便利という特殊な事情もある。Airbnbのような民泊も立ち上がりつつあり、アジアはシェアリング・エコノミーの台頭期に来ているのは間違いない。
日本企業がそこにサービス提供者として参入するのは容易ではないが、顧客対応やシステム、車体整備などサービス品質の面で日本企業がビジネスチャンスをつかめる可能性がある。新しい潮流を傍観しないことが重要だ。
最新号を紙面で読める!