骨太方針を閣議決定 恒久財源の確保が不可欠 成長と分配の好循環を目指す

政府は2日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2016」「ニッポン一億総活躍プラン」「日本再興戦略2016」を閣議決定した。骨太の方針では、600兆円経済を目指す中、第4次産業革命による新たな産業創出や観光・農林水産業の成長産業化による地方創生、ICT活用による中小企業の生産性向上など、わが国の潜在成長率を引き上げるのに必要な分野も盛り込まれた。日本商工会議所の三村明夫会頭は同日発表したコメントで「一番の課題は、実効性とスピードである」と述べ、政府に対し、早期かつ確実な政策実行を求めた。骨太の方針の要旨は次のとおり。

「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2016」の要旨

第1章 現下の日本経済の課題と考え方

1.日本経済の現状と課題

▼世界経済の状況とわが国の課題

○わが国経済のファンダメンタルズに大きな変化はないが、昨夏以降、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まっており、国内経済も個人消費や設備投資などの民需に力強さを欠いた状況。

○その背景にある人口減少、高齢化、現役世代の先行き不安などの構造的課題への取り組みにより、生産性・イノベーション力を引き上げ、働き方改革を進めることなどにより潜在成長率を高めていくと同時に、新市場の開拓、潜在需要の掘り起こしなど、需要の拡大が重要。

○「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、経済再生と財政健全化の双方を一体として実現することが重要。

▼熊本地震への対応

○平成28年度補正予算などにより、一日も早く復興を成し遂げられるよう、政府一丸となって全力で取り組む

2.「成長と分配の好循環」の目指すところ

▼「新・三本の矢」

○「成長と分配の好循環」を確立することにより、地方を含め日本経済全体の持続的拡大均衡を目指すもの。

○また、「地方創生」により、人口減少と地域経済の縮小の悪循環に歯止めをかけ、将来にわたって地域の成長力を確保する。

▼消費税率

○10%への引き上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する。

3.600兆円経済に向けた道筋の基本的考え方

○新たな需要と供給を生み出し、実質2%程度、名目3%程度を上回る成長を実現。

4.東日本大震災からの復興・創生

○「復興・創生期間(平成28年度~32年度)」においては、被災者の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現することを目指す。

○復旧・復興事業の規模と財源は、復興期間10年間で32兆円程度。

○福島の原子力災害被災地域においては、遅くとも平成29年3月までに避難指示解除準備区域・居住制限区域の避難指示を解除できるよう環境整備に引き続き取り組む。

第2章成長と分配の好循環の実現

1.結婚・出産・子育ての希望、働く希望、学ぶ希望の実現

▼結婚・出産の支援

○地域の特性に応じた自治体の取り組み支援、企業などによる結婚支援の取り組み支援、ライフプランニング・キャリア形成のための教育強化、若者・子育て世帯向け住宅支援、不妊治療の充実。

▼女性・高齢者の就業推進

○同一労働同一賃金の実現など非正規雇用労働者の待遇改善、長時間労働是正に取り組み、多様な働き方の選択肢を広げる。非正規雇用労働者の正社員転換などを推進する。

○高齢者の就業率を高め地方の特性に応じた働き方改革を進める。

○女性が働きやすい税制・社会保障制度・配偶者手当などへの見直しの具体的検討。

▼女性の活躍推進

○女性活躍加速のため、働き方改革や男性の家事・育児などへの参画促進、女性活躍のための行動計画の策定・情報公表などの推進。

2.成長戦略の加速など

▼生産性革命

○人材育成(実践的な職業教育、教育研究拠点の強化、体系的育成策など)

○教育再生(世界トップレベルの学力達成と基礎学力の向上、チーム学校、給付型奨学金の創設に向けた検討など)

○官民を挙げて、IoT、ビッグデータ、人工知能の研究開発を推進。2020年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上(政府1%)とすることを目標。

○企業の中長期的な成長力・収益力の強化、サービス産業の生産性向上。

▼新たな有望成長市場の創出・拡大

○2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などの開催への取り組みなど。

○観光の基幹産業化、攻めの農林水産業の展開。

▼TPPなどに対応した海外の成長市場との連携強化

○TPPを活用した新たなグローバル・バリューチェーン構築などに必要な施策を講じる。TPP協定の早期発効、日EU・EPA、RCEP、日中韓FTAなどの締結を推進。

○1年以内を目途とする行政手続きなどの抜本的な簡素化などの政策パッケージなどにより、対日直接投資をさらに促進。事業環境の国際的なイコールフッティングを確保。

○農林水産品、インフラシステムなど分野横断的に、「安全」・「安心」・「高品質」などの評価を「日本ブランド化」するとともに、クールジャパン戦略を推進し、輸出・観光を促進。

○外国人材の活用の拡大のため、世界最速級の「日本版高度外国人材グリーンカード」の創設など諸外国以上に魅力的な入国・在留管理制度を整備するとともに、子弟の教育環境を含む生活環境整備を進める。

▼地方創生、中堅・中小企業・小規模事業者支援

○地方創生の深化を実現する政策の推進など。

○中堅・中小企業・小規模事業者が第4次産業革命に対応できるようICT投資やIT人材の育成を支援。生産性向上に向けた取り組みなどを推進するとともに、その経営基盤強化を図る。

○地域の活性化(広域的な高速交通ネットワークの早期整備・活用を含む)、沖縄振興、地方分権改革などを推進。

▼防災・国土強靱(きょうじん)化、成長力を強化する公的投資への重点化

○社会資本整備の重点化と生産性革命、国土強靭化、防災・減災、バリアフリー化の推進などの都市の活力の向上など。

▼規制改革の推進

○現在の規制改革会議の設置期限(平成28年7月末)以降も切れ目なく規制改革に取り組む。国家戦略特区は、平成29年度末までの2年間を「集中改革強化期間」とし、「岩盤規制」の改革などを行う。

3.個人消費の喚起

▼賃金・可処分所得の引上げなど

○労働分配率の低下傾向に歯止めをかける。賃金、最低賃金の継続的な引き上げを実現するための環境整備。

○社会保障の効率化による社会保険料の増加の抑制など。

▼潜在的な消費需要の実現

○健康長寿分野での自治体や企業・保険者における先進的な取り組みの全国展開。高齢者の生活環境向上のため、民間活力による健康・医療サービスの創出育成・利用促進など。

○国内・外国人旅行者双方による観光・旅行消費の活性化のため、「観光ビジョン実現プログラム2016」に基づき「明日の日本を支える観光ビジョン」の早期実現を目指す。

▼ストックを活用した消費・投資喚起

○良質な住宅ストックの流通促進、住宅の長寿命化に資するリフォームの促進、地域の価値を高めるための空き店舗などのリノベーション支援、不動産投資の促進など。

▼消費者マインドの喚起

○過去のプレミアム付商品券・旅行券、子育て支援バウチャーなどの分析を踏まえつつ、全国規模のセールスイベントの実施なども含め、消費者マインドの喚起策を検討。

4.成長と分配をつなぐ経済財政システムの構築

▼アベノミクスの成果の活用

○人口減少、少子高齢化という構造的課題に対処するため、アベノミクスの成果も活用しつつ、一億総活躍社会の実現などの重要課題に係る取り組みを推進。

▼資源配分の効率化

○国・地方のワイズ・スペンディングを推進し、効率的な資源配分を実現。

5.安全・安心な暮らしと持続可能な経済社会の基盤確保

▼外交、安全保障・防衛など

○戦略的な外交を強力に展開。「国家安全保障戦略」を踏まえ、各国との協力関係を拡大・深化させる。

▼資源・エネルギー(原子力の安全確保を含む)

○エネルギー分野での投資拡大・効率改善による経済成長とCO2排出抑制の両立を図る。

▼地球環境への貢献

○世界の温室効果ガスの削減などの地球温暖化対策、循環共生型社会の構築などに取り組む。

第3章経済・財政一体改革の推進

1.経済・財政一体改革の着実な推進

○600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す。

○追加的な歳出増加要因(子ども子育て・家族支援など)については、必要不可欠なものとするとともに、適切な安定財源を確保する。

2.先進・優良事例の展開促進、国と地方の連携強化、「見える化」の徹底・拡大

▼国と地方の連携強化

○地方からの提案型も含めた仕組み作り、地方行財政改革、頑張る地方を応援するための施策の拡充。

▼「見える化」の徹底・拡大

○基礎となるデータセットを公開。集約・分析したデータを一元的かつ容易に閲覧・検索できるシステムを構築。

3.ワイズ・スペンディングの仕組みの強化

○優先順位付けとデータ分析による効果の評価などの分析通じて、適切に予算編成の過程に取り込む。

○義務的経費も、健康寿命の延伸や住民サービスの広域化、IT化の進展などを踏まえ、制度全体の見直しなどを行い、エビデンスに基づくPDCAサイクルを徹底。

○地方の裁量度が高いものは、国庫支出金のパフォーマンス指標の設定・評価のための分野横断的仕組みを構築。

4.実効的なPDCAサイクルの構築

○経済財政諮問会議において、概算要求の検討に着手する前から議論と精査を進める。経済・財政一体改革推進委員会において、主導的に進捗(しんちょく)管理、点検、評価を行う。各府省庁は、概算要求などに適切に反映させる。

5.要分野ごとの改革の取り組み

▼社会保障

○医療費の地域差の半減に向け、医療費適正化基本方針に係る追加検討。

○医療従事者の需給の見通し、医師に係る実効性のある地域・診療科偏在対策などを検討。

○医療費の増加要因や地域差について、更なる分析。

○保険者によるデータの集約・分析、保健事業の共同実施の支援などによりデータヘルスを強化。

○平成28年度診療報酬改定の影響の調査・検証。

▼社会資本整備など

○コンパクト・プラス・ネットワークの形成と公的ストックの適正化を図る。

○国際競争力の強化、国土強靭化、防災・減災対策、老朽化対策などの分野で、ストック効果が最大限発揮されるよう、安定的・持続的な公共投資を推進。

○コンパクトシティがもたらす多様な効用を明らかにする指標を開発。

▼地方行財政改革・分野横断的な課題

○トップランナー方式の導入に際し、趣旨、経費の算定基準、今後のスケジュールを公表、周知。

○ユーザーがさまざまな条件を設定して自治体間比較ができるデータベースの早期実現など。

○公共施設の集約化など、自治体が直面する課題について、地域の実情に応じた広域化・共同化など。

○地方自治体のIT化・BPRの推進に向け、政府CIOによる支援、自治体におけるCIOの役割を果たす人材確保。

▼文教・科学技術など

○少子化の進展を踏まえた予算の効率化、民間資金の導入促進、予算の質の向上・重点化、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底を基本方針として改革。

○歳入改革、資産・債務の圧縮

○歳入増加に向けて、課税ベースの拡大などを通じ、新たな税収増を生み出す。マイナンバーをキーとした仕組みを早急に整備。税・社会保険料徴収の適正化。

○国際的な租税回避などを巡る近年の動きを踏まえ、グローバルなビジネスの構造変化に対応した国際課税制度の再構築などについて、制度・執行の両面からさらなる取り組み。

○一億総活躍社会の実現に資する観点などに照らし、国公有地の有効活用を推進、不要資産の売却など。

第4章当面の経済財政運営と平成29年度予算編成に向けた考え方

1.経済の現状および今後の動向と当面の経済財政運営の考え方

○「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」も踏まえ、個人消費、住宅・自動車などの耐久財などの動向、海外経済などに細心の注意を払い、今秋に向けて総合的かつ大胆な経済対策を取りまとめることなどにより、デフレに後戻りすることなく完全に脱却できるよう、万全の対応を行う。

○賃金・可処分所得の引き上げ、規制改革、消費・投資喚起策などを推進するとともに、成長戦略の加速と一億総活躍社会の構築を通じ、成長と分配の好循環を実現。

○日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標の実現を期待。

2.平成29年度予算編成の基本的考え方

▼集中改革期間2年目の取り組み

○「経済・財政再生計画」、経済・財政再生アクション・プログラム、改革工程表にのっとって、経済・財政一体改革を面的に拡大するとともに、国と地方を通じたボトムアップの改革を加速する。

▼平成29年度予算編成の在り方

①経済財政諮問会議において、概算要求の検討前からエビデンスを基に議論と精査を進める。その上で、予算編成に経済・財政一体改革を反映させる。

②健康増進、コンパクトなまちづくり、住民・行政サービスの広域化・IT化などに向け、先進・優良事例の展開促進、国と地方の連携強化、「見える化」の徹底・拡大を進める。

③人口減少、少子高齢化という構造的課題に対処するため、アベノミクスの成果も活用しつつ、一億総活躍社会の実現などの重要課題に係る取り組みを推進する。

④第3章に掲げる主要分野毎の改革を推進するためのメリハリの効いた予算とする。