負担比率は適正か 問題提起した裁判例
今回は、容器包装リサイクル法(容リ法)の規定する再商品化の費用負担について合憲性が問われた裁判例(東京地判平成20年5月21日)を紹介します。
この事案は、容リ法11条2項2号ロに規定される業種別特定容器利用事業者比率が憲法に違反するとして小売業(スーパー)を営む特定事業者(Ⅹ)により訴えが提起されました。この比率について例を挙げて説明しますと、一つの容器に対し、容器包装を利用して商品を販売する事業者(利用事業者)が1社、容器包装を製造している事業者(容器等製造事業者)が1社存在するとします。1個分の容器のリサイクルは、それぞれが利用・製造の分類による負担比率に基づき義務を果たすことで成り立ちます。
義務の案分は、拡大生産者責任の考え方に即して、どのような容器包装を利用するかの最終的な選択権、つまり、使いたい容器包装を決定することができる利用事業者は容器製造事業者よりも再商品化の責任が大きいものとして負担を多くしています。この利用事業者の負担する比率が容器製造等事業者に比べ重すぎるので憲法に違反するのではないかというのが利用事業者であるⅩの主張でした(図参照)。
裁判所は、業種別特定容器利用事業者比率は、特定事業者各自の再商品化すべき量を、販売額を基礎として案分するものである。拡大生産者責任の考え方に依拠した合理的な定め方であり、再商品化を促進するという容リ法の立法目的と合理的な関連性を有すると判断し、Ⅹの請求を退けました。結果として、Ⅹの主張は認められなかったわけですが、当時における容器包装の環境負荷の程度を考慮し、再商品化義務の負担割合が適切かどうか、国に対し問題提起を行ったという点で重要な意味を持つものと考えられます。
制度と実情の変化 考える機会に
この事案は2005(平成17)年のものであり、古い案件といえます。しかし、1995(平成7)年に容リ法が制定され、その後の2006(平成18)年の改正から既に18年が経過しています。容リ法を取り巻く環境が変化している中、現在の運用がニーズと制度内外の実情変化に即しているのか、見直しの必要はないかなど、過去の事案を参考にすることは、今後の容リ制度の適正な運用に向け、有益な検討材料となるものと考えられます。
さて、23年4月から9回にわたり掲載された「詳しく知りたい!容リ法」シリーズですが、今回で最終回となります。1年間ご愛読くださり誠にありがとうございました。
さらに詳しくお知りになりたい方は、日本容器包装リサイクル協会ホームページまでアクセスいただければ幸いです。
公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会▶ https://www.jcpra.or.jp/
最新号を紙面で読める!