11月某日、NTT西日本の中島賢一さんに会うため、ゾンビ先生は新幹線に乗っていた。中島さんはeスポーツの伝道師、とでもいうべき人で「楽しいことをベースに、社会課題を解決していく」活動をされている。福岡市の中心部にある中島さんのオフィスにはアニメや漫画、ゲームのフィギュアやグッズが並び、通りがかった小学生がYouTuberの収録スタジオと間違えて手を振ってくることもあるという。 「何か面白い話はありませんか」というこちらからのむちゃぶりに、飛び出した話はゲーム機「Nintendo Switch」を活用したプログラミング教育の実践。え? 何がコンテンツツーリズムなのかって? まぁ、聞いてください。実践しているのは中島さんの故郷である熊本県山鹿市の小学校で、2021年度に開始して徐々に採用する学校が拡大中。
この取り組みは、ただのプログラミングの授業ではなく、探究学習としても位置付けられる。GIGAスクール構想によって一人一台割り当てられている情報端末、図書館などを活用して山鹿市について学ぶが、そのアウトプットが「ゲーム作品の制作」なのだ。児童たちは、地域の資源を調査し、Switch用ソフト『ナビつき!つくってわかる はじめてゲームプログラミング』で制作スキルを獲得して、自地域をゲームとして表現する。児童はイキイキと取り組み、教員の負担も少ない。
現在は、これがさらに発展している。児童たちがつくったゲームを、被災地である石川県能登町の小学校の児童たちに遊んでもらう。そして、「今度は皆さんにつくってもらいます」と同じ環境を用意する。能登町の地域資源をネタにしたゲームが出来上がる……。遠く離れた小学生同士がゲームというコンテンツでつながり、相手の地域の人や文化について知り、興味を持ち、訪れる。まさにこれこそが、コンテンツツーリズムをゼロからつくり出す技法の一つだろう。
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