中堅・中小企業では取引先のグローバル化に伴い、国際感覚を持った人材の確保が急務になっている。このため、将来性のある若手社員を思い切って海外留学させようという会社もある。その際、ハーバード大学に代表される超有名大学を狙う事例が多いようだ。これに対し、教育現場に詳しいSAPIX YOZEMI GROUPの髙宮敏郎共同代表は、日本のように偏差値で分類するのは適当でなく、北米でも「特色のある大学がたくさんある」と話す。大企業や中央官庁では人事異動の一環として、特定の大学に派遣するケースが多かった。しかし中堅・中小企業の場合、自社の事業にとって将来につながる留学でなければ意味がない。大学名に固執するのは好ましくないと考える▼
外国人や留学経験者を採用することで国際化に対応しようとする企業もある。外国人の場合、一つの企業に定着し、働き続ける者はあまりいない。帰国してしまう人もいる。ただ、当人の活躍によって、企業単独では得られなかった人脈が「広がることが期待できる」と同グループで海外留学支援に取り組む髙宮信乃国際教育事業本部長は、実例を挙げて指摘している。むしろ、ステップアップできる企業と評価されれば優秀な外国人が就職を希望するようになるのではないか。雇用形態を契約にしておくことで、実績の乏しいスタッフなら「更新しなければいい」(髙宮本部長)というメリットもある▼
留学経験者も縁がないと最初から諦めるのではなく、自社で働けば当人の成長につながる点を強調することを通じて、採用の機会が増えると思う。その際も外国人と同様に途中退社もあり得ると覚悟しておく姿勢が望まれる
(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)
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