昨年12月に改正出入国管理法が成立し、主にアジアからの労働力を受け入れる体制整備が進んだ。今回の改正では建設、介護、漁業、農業、宿泊など14業種で一定の能力が認められた外国人を熟練度に応じて二つのランクに分け、長期間受け入れるというものだ。高い技能を持つ「特定技能2号」では家族の帯同も認められるようになった。人手不足に対応して、日本として外国人に思い切って門戸を開いた形だが、日本が期待する通り、ベトナムやフィリピン、ミャンマーなどから人が働きに来てくれるだろうか?
「エンジニアリング&テクノロジー・カレッジ」。昨年12月にミャンマーの最大都市、ヤンゴン中心部のショッピングモールに隣接したビルで見掛けた学校だ。シンガポールの工業専門単科大学の分校で、ロボット、IoTの導入など生産ラインの自動化やICT(情報通信技術)を教える。構えの新しさから見て、明らかに最近開校したばかり。この看板に驚いたのは、東南アジアに共通する工学系の人材不足への対応が素早くなったと感じたからだ。
アジアの途上国では、英語学校やオーストラリアなど海外のビジネススクールの屋外広告をよく見掛ける。「英語は成功への第一歩」「海外で学んで未来を開こう」といったフレーズだ。もちろんヤンゴンでもそうした看板は目にするが、工学・工業専門の学校が早くも進出したことは、ミャンマーに工場を立地しようという日本企業などには朗報だ。タイやベトナムでは日泰工業大学をはじめ日本企業が支援して生産管理や「カイゼン」に当たる人材の育成を図ってきたが、拡大する需要になかなか追いつかないのが実情。ティラワ経済特区など外資の進出が軌道に乗り始めた段階で現地に工学系専門学校ができれば、日本の製造業には大きなプラスだろう。
今、中国はもちろん東南アジアでも人件費が急騰している。米中経済対立を背景に外資の進出ブームが起きているベトナムなどでは、人手不足も深刻化している。その上、現地でさまざまな職業教育の機会が増えれば、将来的に日本に働きに来たいと思う若者が減るのは必然だろう。アジアの途上国の経済水準が上昇すれば、日本には旅行したいが、日本では働きたくないという若者が増えるだろう。訪日観光客の増加は、日本での外国人労働力確保とは反比例する可能性がある。単なるビザ要件の緩和ではなく、働いてみたいという労働環境の改善こそ、日本企業が今、取り組むべきことだろう。
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