昨年は世界的に電気自動車(EV)が大きな話題になり、今年初めのコンシューマー向けエレクトロニクスショー「CES2018」も家電やIT機器よりも自動運転含めEV関連の出展が多かった。EV時代がすぐにも到来しそうな印象を世界に与えているが、本格的なEV時代は2030年以降とみるべきだろう。ただ、二輪車の電動化はEVより先行して進むのは確実。「二輪車帝国」のアジアではそのインパクトは大きい。
すでに中国では電動バイクが年間3000万台も販売され、エンジン駆動のバイクを圧倒した。電動バイクの保有台数は2億台を突破している。電動バイクが劇的に普及したのは充電インフラが簡単だからだ。中国の地方に行けばコンビニや飲食店などの前にはコイン式充電器が並んでいる。粗末な設備だが、それで十分な機能を果たしている。自宅でも延長コードを延ばすだけで簡単に充電できる。
それ以上に庶民にとって魅力的なのは電動バイクの走行コストだ。中国などで市販されている電動バイクは1kw時で、40キロ程度は十分走る。1kw時の電気料金が15円とすると、1キロあたりの走行コストは0・375円。同クラスの車体のエンジンバイクの燃料コストは1キロあたり1・3円程度。つまり電動バイクはエンジンバイクの3分の1から4分の1くらいのコストで移動できる。
これは東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドでも意識されており、中国を追うように電動バイクが普及の気配を漂わせ始めた。バイクで世界トップのホンダはタイ市場で年内に電動バイクを投入すると表明した。インドでも二輪車大手のヒーローの電動バイク部門は5年間で50億ルピー(約85億円)を電動バイクの開発に投資すると発表した。独コンサルティング会社、ローランドベルガーは2025年にはインドの二輪車市場の35%が電動車になると予測している。インドネシアでは業界団体が電動バイクに関して性能や速度、廃棄バッテリー問題などで新たな規制や振興策の策定を政府に要求した。
電動バイクはこれから5年間以内に急速に普及する可能性が高い。内燃機関のバイクと構造や部材が異なる電動バイクが売れ始めれば、裾野産業では大きな変化が起きる。さらに充電ステーションなどの関連装置も売り上げが急増すると見ていい。一方でエンジンバイクのサプライヤーは受注が減る恐れがある。EVは将来の課題だが、電動バイクはすぐにも進展する問題であり、チャンスでもある。
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