事例2 観光客の満足を〝大〟満足に
金澤八家(石川県金沢市)
金沢市内にある都市型ホテル8社の社長や総支配人が集結し、誘客プロジェクトを展開している「金澤八家」。北陸新幹線開業を見据えて平成25年1月に発足して以来、「あるモノを磨いて、ないモノをつくる」をキーワードに、活動している。彼らは誘客力やもてなし力を高めて「一客再来」につなげるべく、力を尽くしている。
〝おもてなし〟で リピーターをつくれ
前田利家を藩祖とする加賀藩に仕えた8つの家老家「加賀八家」。その名にあやかって結成された「金澤八家」が活動をスタートしたのは、約2年前のことだ。北陸新幹線開業に伴い、増加が予想される観光客に、魅力ある観光プランやおもてなしを提供することで金沢ファンになってもらおうと、6つのプロジェクトを立ち上げて精力的に活動している。
「金沢は歴史、伝統、文化の揃ったまちです。でも、それだけなら一度の来訪で十分です。何度も足を運んでもらうためには、単なる満足ではなく、〝大〟満足していただくことが必要です。そのポイントは、いかにサプライズを提供できるか。例えば、夜に雪が降った次の日、お客さまの車に積もっていた雪が下ろしてあったら驚くし、『よかった』と思いますよね。そういう心配りが当たり前にできるようになることで、お客さまの満足度をアップさせようというわけです」と金沢ニューグランドホテル社長で金澤八家会長の庄田正一さんは説明する。
2年目以降につなげるための戦略づくり
6つのプロジェクトは観光や食などさまざまな視点で展開されている。その一つである「街道観光プロジェクト」は、金沢と近隣観光地との回遊性を高め、広範囲に足を延ばして、それぞれの地域を堪能してもらおうというもの。すでに近隣観光地と連携して、金沢と飛騨高山、能登、加賀温泉といった街道旅行の商品化プロモーションをしている。「海外誘客プロジェクト」では、台湾、タイ、シンガポールなどへのプロモーションを実施。小松空港と台湾とを結ぶ直行便の増便(毎日就航)やタイと結ぶチャーター便の就航実現を後押しした。
また、「金沢再発見プロジェクト」では、金沢の不思議エピソードの募集や社員教育での金沢検定の積極的活用により、観光客への情報発信力の向上を図っている。
「夜のもてなしプロジェクト」は、お茶屋遊びができるという金沢の持ち味を生かした、夜も楽しみたい人のためのお茶屋紹介システムだ。「グルメ開発プロジェクト」では、8つのホテルでランチのスタンプラリーやグルメフェアなどの企画を実施している。
「お土産開発プロジェクト」では、金沢にある和菓子店の看板菓子を8種類詰め合わせた「金澤八家の金沢八菓」という新土産を開発。各種学会や大会などで来訪した人をメーンターゲットに予約販売を開始している。
「本来なら8つのホテルが扱っているクッキーを詰め合わせて土産にした方がもうかっていいのですが、われわれはもうけるためにやっているのではありません。いかに金沢をPRし、お客さまの大満足を得て2年目以降につなげるか。その共通認識のもと、仲間とスクラムを組んで楽しみながら取り組んでいます」と庄田さんは胸を張る。
東京から新幹線で京都に行く人に対し、東京から金沢に行く人は、わずか10分の1程度だという。北陸新幹線開業後、これがどう変わるのか。金澤八家の取り組みはどれだけ観光客の心に響くのか。結果が出るのが今から待ち遠しい。
※月刊石垣2015年2月号に掲載された記事です。
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