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テーマ別企業事例 開業直前!北陸新幹線で地域が動き出す

事例4 自然と産業、ユニークな交通網を強みに魅力を磨く

富山商工会議所(富山県富山市)

開業時は、北陸新幹線富山駅高架下から路面電車が発着するようになるが、将来は図のようにポートラムとセントラムが接続され、富山駅の南北を結ぶ

新幹線開業による富山県内への経済波及効果は、年間約88億円(日本政策投資銀行試算)となっている。これをさらに大きく、そして持続的なものにするために、富山商工会議所も独自の取り組みを続けてきた。平成23年4月には、同所職員によりプロジェクトチームがつくられた。もうすぐ、それらの成果が形になるだろう。どのような期待の下に新幹線を迎え、どのように生かそうとしているのだろうか。今回は、開業前夜の富山を訪ねた。

新たな交通の要衝として脚光

北陸新幹線が長野から金沢まで延伸することを受け、富山ではできるだけ多くの人に訪れてもらおうと、県や市、そして商工会議所を中心にさまざまな取り組みが行われている。商工会議所は、まず、ビルの壁面に開業を祝す大型ポスターを貼り、ウインドーには富山の四季をアピールするポスターを展示。さらには、「源」(お弁当)や「月世界」(和菓子)をはじめとする地元企業の新幹線関連の新商品も紹介している。さらに、開業までの大きなカウントダウンモニターも設置し、その日を待ち構えている。

では、新幹線開業を富山市はどのような期待感を持って迎えているのだろうか。スタート時からメンバーとして関わっている産業振興部部長の加藤泰喜さんに話を伺った。

「北陸新幹線開業によって、東京-富山間の移動にかかる時間は、これまでの3時間11分から最速で2時間8分と、大幅に短縮されます。観光においても、ビジネスにおいても、この変化はビッグチャンスにつながるはずです。手始めとして、この3月23日から25日にかけ、北陸三県(福井・石川・富山)と新幹線沿線の〝元気企業〟による大商談会を、富山国際会議場で行います。今までは、北陸は首都圏から遠くて行きづらい地域というイメージがありましたが、それも一掃されるはずです」

富山は路面電車が充実し、市内の環状線を走る「セントラム」と、富山駅から港までを結ぶ富山ライトレール「ポートラム」が走る、珍しい電車のまち。また、立山・黒部アルペンルートや飛騨高山までの交通の要衝でもある。新幹線という新しい交通網によって、時間の利が得られることで、今後は人の流れが一変するかもしれないという。「年間約250万人の観光客が訪れる飛騨高山。東京駅から高山を訪れるコースとしては、名古屋、長野、松本を通るコースがありますが、いずれも4時間以上かかります。しかし、新幹線開業によって、富山からJR高山本線を利用すれば、3時間40分を切ることも可能です。昨年の10月には神岡鉱山などで有名な飛騨・神岡のモニターツアーを実施し、今後の産業観光を軸とした広域観光の可能性を探りました」。

また、年間100万人を超える観光客が訪れる立山黒部アルペンルートも、首都圏からは長野県(大町)側から入る人が多かった。しかし、新幹線開業後は、富山から入る人が増えることは、間違いないだろう。富山の売り物は、何といってもその自然。駅に降り立つと、3000m級の山々が雄姿を見せる立山連峰が背景となって迎えてくれる。その姿を眺めながら、立山黒部アルペンルートを目指すのは、観光客にとっては魅力的なコースとなるはずだ。

最初は日帰りでもいい 次は宿泊してほしい

売り物は、交通と自然だけではない。富山が育んだ地元の産業も、県外への大きなアピール材料となる。

越中富山の薬売りを持ち出すまでもなく、古くから「薬都」として知られてきた富山。これをPRするために、22年度からJR富山駅周辺に薬草などを植えたプランターを設置する事業も行われている。

この他、新幹線開業をにらんだ富山商工会議所をはじめとした県内商工会議所が連携した取り組みとして特筆すべきものに『産業観光図鑑』の刊行がある。この富山県の産業観光のガイドブックを見ると、観光のモデルコースや県内の見どころ、産業などが簡単に分かる。県内の約100社(電子ブック版では約130社)が掲載されている大がかりなもので、県内を訪れるビジネスマンを中心に配布する予定だ。

「富山は日本海側屈指の工業地域で、化学・医薬品や機械づくりの企業が集まっています。北陸新幹線開業で首都圏からは日帰りのビジネス客が増えると思います。そんな人に富山の魅力を知ってもらい、最初は無理でも、次回、次々回にはご家族やご友人と宿泊し、滞在していただこうと思い、つくったのです」

高岡・黒部とも連携 オール富山は魅力満載

富山商工会議所が行っている事業に「しゃべらんまいけ! 越中・とやま弁大会」がある。すでに9回を数えるが、これは富山弁が観光資源になるとの発想から生まれた。「たとえば、〝ありがとう〟を意味する富山弁の〝きのどくな〟などを聞くと、県外の人は富山を訪れた実感を持つのではないでしょうか。また、地元の言葉を大事にするというのは、伝統を守ることにもつながると思います」。

富山平野を守るようにそびえる立山連峰、多くの観光客を魅了する立山・黒部アルペンルート、渓谷にたたずむ宇奈月温泉、そして、日本の渚百選にも選ばれた雨晴(あまはらし)海岸を有する歴史と景勝のまち・高岡、それぞれが違った魅力を持つ富山の3駅。新幹線開業で、オール富山の魅力がさらに輝きを増す。

※月刊石垣2015年2月号に掲載された記事です。

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