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テーマ別企業事例 なるほど!ココが違う「後継ぎ」女性社長の繁盛経営

事例4 お互いの良さを生かし母と娘で製造販売を分担

宝榮産業オプティマス(大阪府堺市/大阪市)

オプティマスを塗った新築マンションのおしゃれな内装

夫の病気により、突然会社の経営を担うことになった宝榮産業の高尾弘美社長。自ら営業をこなしつつ、経費を極力抑えた堅実経営を実践してきた。そうした中、一人娘である一美取締役のタイでの特殊塗料販売をきっかけに、光触媒入り遮熱塗料「オプティマス」の開発に成功する。その製造と販路拡大に母娘二人三脚で取り組んでいる。

経営も塗料も知識ゼロ丁寧な製品づくりで顧客を開拓

大阪府堺市にある宝榮産業は、高尾弘美社長の下、昭和60年に設立した塗料メーカーである。同社の前身は自転車部品をつくる鉄工所で、高尾さん夫婦で営んでいた。ところが、社長である弘美さんの夫が塗料メーカーに転業しようと機械設備を整えた矢先、突然倒れてしまったのだ。

「途方に暮れました。私はそれまで経理をしていたけれど、経営のことは分からないし、塗料のことはもっと分かりません。でも、そろえた機械を処分しても二束三文だし、製造はベテランの技術者がいたので、私が会社を引き受けようと腹をくくりました」と、弘美さんは社長に就いたいきさつを振り返る。

とはいえ、顧客を一から開拓しなければならない。電話帳を開いて、塗料を扱いそうな会社に片っ端から電話をかけては営業に回った。

「まだ実績もないし、相手にしてくれそうなところを探しました。行き当たりばったりのやり方でしたが、逆に経営に素人だったから、怖いもの知らずのところもあったのかもしれません(笑)」(弘美さん) もらえる仕事は何でも引き受けた。技術職以外の従業員がいないため、塗料を車に積んで自ら納品に回った。つらかったのは、臭いだ。車内に充満する塗料のシンナーの臭いで、常に頭痛を抱えていたという。

さまざまな苦難を乗り越え、自転車のフレームに使うメラミン樹脂塗料を中心に4~5年で顧客をつかみ、徐々に経営が軌道に乗る。ところが、外国産自転車に押されて発注が激減し、溶剤系塗料の規制が厳しくなってOEM生産の取引量も減ってくるなど、新たな危機に直面する。しかし、弘美さんの柔らかい物腰や手を抜かない同社の製品づくりから、人とのよい出会いがあり、新たな水性塗料の引き合いにつながる。そこから耐熱・遮熱塗料の製造販売へとかじを切った。

失敗をヒントに新商品開発一人娘が販売会社を設立へ

そんな母の姿を見てきたのが、一人娘で同社取締役の高尾一美さんだ。鉄工所時代から両親が家におらず、自立心旺盛に育った一美さんは、中学卒業後アメリカの高校に留学する。10年後に帰国し、大手IT企業に就職したが、弘美さんが力を入れていた耐熱・遮熱塗料の販売を拡大するために退職。タイに渡って販売施工会社を設立した。

「母は、ゆくゆく事業を継がせるために留学させたわけではなく、私もそのつもりはなかったんです。でも、母の苦労を知っていたので、私のやり方で何かできないかと思い、当時日系企業が次々と進出していたタイに可能性を求めたんです」と一美さんは説明する。

タイで主に遮熱塗料を塗る施工を請け負っていたある日のこと。塗布面の汚れを防ぐために、現地スタッフに光触媒のクリアコートを上塗りさせたところ、塗り残しがあちこちにあり、そこに汚れが付いてクレームになったことがあった。光触媒には自浄作用があるため、塗り残し部分だけ汚れが目立ってしまったのだ。そこから塗料の中に光触媒を混ぜ込むことを思い付いたが、今度は塗布面が1カ月ほどで劣化するという新たな問題が発生した。

「光触媒は紫外線で分解される性質があり、その力が強すぎて塗装まで分解してしまったんです。底知れぬパワーを感じて、塗っても劣化しない光触媒入り塗料をつくりたいと、大阪府立大学と共同研究に乗り出しました」(一美さん)

約3年の研究開発を経て、平成24年に光触媒入り遮熱塗料「オプティマス」が完成し、商品化する。それを機に販売会社オプティマスを設立し、一美さんが社長に就任した。

お互いの個性を尊重し二人三脚で販路拡大を目指す

以降、オプティマスは弘美さんが製造を担当し、一美さんが販売するという二人三脚体制で普及に努めている。同商品は高い遮熱効果に加え、表面の汚れや臭いを分解除去するセルフクリーニング効果が特徴だ。そのため建物の屋根や外壁だけでなく、内装に使えば空気清浄効果も発揮する。そこで一美さんは、同商品を機能性内装材としてもPRし、ブランディングに努めている。また、26年に近畿経済産業局の新連携事業に認定され、海外市場も視野に得意先や提携先の獲得にも乗り出している。

「光触媒は透明なので、汚れが付きにくいかどうかはある程度時間がたたないと分かりません。しかも、従来品と比べて高価なので、急速に売り上げを伸ばすところまではいっていません。でも、今までは種まきの段階。発売から5年が過ぎ、他商品との違いに気付く人が出てきて、販売代理店を申し出る会社も増えているので、これからが開花の時期だと思っています」(一美さん)

会社では母親のように優しく厳しく接しながら人材を育成し、経費を極力抑えた堅実経営を実践してきた弘美さんと、家業の技術を生かして、新たなビジネスモデルを打ち立てた一美さん。まったくタイプの異なる2人だが、互いを「度胸がある」と評価する。

「私の今の目標は、80歳まで頑張って、オプティマスをもっと世間に広めること」と語る弘美さん。その日はそう遠くないだろう。

会社データ

社名:宝榮産業株式会社

所在地:大阪府堺市中区大野芝町94

電話:072-235-1131

HP:https://www.optimus.jp/

代表者:高尾弘美 代表取締役(母)

従業員:18人

※月刊石垣2018年5月号に掲載された記事です。

会社データ

社名:株式会社オプティマス

所在地:大阪府大阪市浪速区幸町1-2-8

電話:06-6562-1151

HP:https://www.optimus.jp/

代表者:高尾一美 代表取締役(娘)

従業員:9人

※月刊石垣2018年5月号に掲載された記事です。

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