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テーマ別企業事例 アフターコロナを勝ち抜く 「パートナーシップ構築宣言」 経営トップが決断する理由

事例4 「パートナーシップ構築宣言」をすることは企業の成長手形を得るようなもの

コマニー

塚本 幹雄(つかもと・みきお) コマニー株式会社 代表取締役 会長執行役員 小松商工会議所常議員

石川県小松市に本社があるコマニーは、業界トップシェアを誇るパーティション(間仕切り)メーカーである。パートナーシップ構築宣言以前から、取引先とはパートナーとして共存共栄の関係を築き、公平かつ公正な取引を行う努力を続けてきた。そのための従業員教育の徹底や取引先満足度調査の実施など、PDCA*による評価・改善を行っており、パートナーシップ構築宣言をした企業をリードする存在となっている。

取引先との関係を50/50にそれが互いの成長につながる

―御社の社是や経営理念についてお聞かせください。

塚本幹雄会長(以下、塚本) 創業者である私の父が、会社の経営が非常に苦しいときに、自社をいい会社にしたいという思いでつくったのが「我等の精神は人道と友愛である」という社是と、後に制定された「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類・社会の進歩発展に貢献する」という経営理念です。これが意味するところは、人間として正しい道を貫き、社員同士がお互いに家族のように愛情を持ち、切磋琢磨(せっさたくま)していこうという精神です。社内で家族のような信頼関係をつくり、それに幸せを感じた人が、お客さま、取引先、そして社会に対して幸せを届けることができる。そういう会社でなければいけないと思っています。

―今回のパートナーシップ構築宣言に込めた思いは。

塚本 当社には、企業は世の中の幸せに貢献するために存在すべきだという信念があります。それには取引先の人たちも幸せでなければならない。そのために当社はどうあるべきかと考えると、やはりお互いに共存共栄の関係でなければいけないと思っています。パートナーシップ構築宣言は、そういった当社の考え方にぴったり合っていました。

お客さまの要望に応えるために、自分たちは努力しないで取引先にそれを求めるわけにはいきません。取引先との関係を50/50(フィフティ・フィフティ)にするという厳しい流れの方が、お互いに仕事の質は上がると思います。そしてそれが、お互いの成長にもつながる。この共存共栄、パートナーシップの関係というのは、これからの企業が発展してくためには絶対に必要だと思っています。

購買担当者が緊張感を持って仕事に取り組むようになった

―御社の公平かつ公正な取引を行うためのPDCAサイクルの取り組みについてご説明ください。

塚本 経営理念があっても、それが実際の業務でしっかり行われているか確認する必要があります。当社は2017年にお客さま満足度調査を開始し、その後は従業員満足度調査、そして18年からは取引先満足度調査も実施しています。それら三つの調査により、お客さまだけでなく従業員や取引先が、当社が行っていることをどのように感じているかが分かります。その結果を踏まえ、反省すべき点をピックアップして改善の取り組みを行っています。

取引先への調査は、やっていいものかという意見が社内でもありました。価格や納期が厳しいなどという意見ばかり上がってきて、それに対処するのは難しいのではないかという心配があったからです。しかし、共存共栄と言っている以上、取引先のために自らも努力して改善していく必要があるので、始めることにしました。

―これにより取引先からはどのような反応がありましたか。

塚本 取引先を集めた交流会を開いて取引先満足度調査の結果を発表し、これに対する当社の対応や考えをお知らせしています。そこまでオープンにしているので、取引先には前向きに捉えていただき、当社の考え方もよく分かっていただけていると思います。

その後は、弊社と取引先が一緒になって改善を行った事例が出ています。また、当社の購買担当者が常に緊張感を持って仕事に取り組むようになりました。共存共栄の精神と違うことをしてしまうと、取引先からしっかりとその反応が出てきますから。そのため担当者たちは勉強して情報を仕入れ、取引先に提案したりして、一緒になって改善する努力をしています。ですので、この取り組みは今のところはうまく動いていると思います。

仕入れ価格を押し付けず相場を常にチェックして交渉

―取引先と価格を協議する際、データに基づいた合理的な交渉を行っているそうですね。

塚本 どの会社もコストダウンの目標値があり、取引先に安くしてくださいと言うことが一番楽なのですが、それだけでは相手も納得ができません。そこで当社は、一方的に仕入れ価格を押し付けるのではなく、原料となる素材の相場の動きを常にチェックし、当社の仕入れ価格の交渉をしています。先方からも、原料の相場価格が上がっているからもうちょっと高くしてほしいという話が出てきます。価格についてはお互いに100%納得というのは難しいですが、ある程度の納得性を持って価格設定ができていると思います。ですので、そういう意味では取引先から評価していただいているのではないかと思います。

―パートナーシップ構築宣言が、今後の企業の在り方にどのような変化を与えると思いますか。

塚本 取引先が豊かにならないと、発注側である自社も豊かになれません。常にお互いがWin‒Winの関係であることで、全体の経済が成り立っています。このパートナーシップ構築宣言は、これからの世の中を良くしていくために、お互いに共存共栄でなければいけないことをはっきりと打ち出しています。宣言することで、その企業は成長の手形を得たようなものだと思います。一つの会社が自分のところだけで全てができる時代は終わっています。今、ちょうどいいタイミングでパートナーシップ構築宣言という仕組みができたことは、非常に良かったと思っています。

*PDCAとは、Plan:計画する、Do:実行する、Check:評価する、Action:改善する、の略称でPDCAサイクルとも呼ばれる

会社データ

社名:コマニー株式会社

所在地:石川県小松市工業団地1-93

HP:https://www.comany.co.jp/

※月刊石垣2021年3月号に掲載された記事です。

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