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テーマ別企業事例 アフターコロナを勝ち抜く 「パートナーシップ構築宣言」 経営トップが決断する理由

事例3 まず、経営者自らが動き社内でイノベーションを起こすべき

ファーストリテイリング

柳井 正(やない・ただし) 株式会社ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長

1949(昭和24)年に山口県宇部市でメンズショップ小郡商事として創業したファーストリテイリング。同社のメインブランド「ユニクロ」は、今や日本のみならず世界から愛される人気ブランドとなった。まちの小売店から世界的な企業へと成長する過程には、どのようなイノベーションがあったのか。同社会長兼社長の柳井正さんに聞いた。

一生懸命仕事をし、進む方向を決めれば成長できる

―紳士服からカジュアル衣料に舵(かじ)を切った経緯についてお聞かせください。

柳井正会長(以下、柳井) もともと商店街の中で紳士服や紳士用品を扱う小売店でした。僕が社長を継いだころに郊外型紳士服店が業績を拡大していて、当社は出遅れてしまいました。後発で競業を避けるために、カジュアル衣料へとシフトしたんです。当時、アメリカに行くとほとんどがカジュアル服だったので、日本でも必ずこれが主流になると思いました。それで84年に「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」(略称ユニクロ)の1号店を広島市に出店しました。

―危機感が発端だったのですか。

柳井 地方の小売店というのは規模も小さく、「その日暮らし」というところがあります。もっと仕事をしなければ潰れると思いました。一生懸命仕事をすれば将来があり、自分たちの進む方向を決めれば成長できるのではないかと。そこでカジュアル衣料店を全国展開し、上場しようと目標を立てたんです。実際、94年に上場を果たしました。そのころには日本で1位か2位のカジュアル衣料専門店になっていたので、次は世界に進出しようと決めました。スポーツでいえば、国体で金メダルを取ったら、次はオリンピックで金メダルを取りたいでしょう? それで世界に出店したというのが概略です。

‶良い会社〟にならなければ他社とパートナーを組めない

―日本企業がグローバル競争の中で生き残るためには、何が必要だと考えますか。

柳井 会社は日本国内にあっても全てグローバルに通じているので、国内だけを見ていてはダメです。もっと世界に開いた日本企業になることが不可欠と考えます。これは大企業も中小企業も同じです。零細企業であっても、当社がそうであったように、世界に開かれた企業になることはできます。

―日本が国際競争力を強化していくために、大企業と中小企業がパートナーとして、どのような取り組みを行うべきでしょうか。

柳井 まずは大企業や中小企業を問わず、それぞれの企業が将来何をしたいのか、現在何をするべきなのかを真剣に考え、“良い会社”になる努力をすることが重要です。お互いが良い会社でなければパートナーとして組むことはできませんし、Win‒Winの関係にならなければ続きません。ですから、大企業が下請け企業の取引価格を不当に引き下げるといったことをしてはならないし、中小企業も大企業の下請けをしていれば安泰という心構えではいけないと思います。

―その方策の一つとして、オープンイノベーションについては、どうお考えですか。

柳井 僕はイノベーションのないところに発展はないと思っています。それにはまず、経営者自身がその必要性を真に自覚して、社内にイノベーションを奨励するといいでしょう。すると、それを見た外部の企業が「一緒にやりましょう」と言ってくる。それが自社にとって良い企業なら一緒にやればいいんです。そういう意味で、良い会社になる努力をしながら、経営者自らがリードしてやっていかない限り、イノベーションは生まれないと思います。

対等な関係を築くためにまず経営者が変わることが重要

―「パートナーシップ構築宣言」のどのような点に賛同しましたか。

柳井 どの企業もそうですが、パートナーがいなければ生き残っていけません。そして、強いパートナーシップを構築するには、お互いにイノベーションを生み出し、Win‒Winの関係でやっていくことが欠かせません。それには、相手が大企業であれ中小企業であれ、対等な立場で仕事をしていくことが重要です。例えば、相手から「買ってやる」という態度をとられたら、「買ってもらう必要はない」と考えます。相手だってメリットがあるから買うわけでしょう? また、理由もなく値切られたら、「理由を示してほしい」と言うべきです。

逆を言えば、相手にものを売るとき、自分たちの部品やサービスの付加価値をきちんと説明して、それらがどのように最終製品や最終サービスになっていくのかという筋道を論理的に示し、相手に認めてもらう必要があります。たとえ態度が大きい相手でも、真剣に説明を受ければ納得し、話は前に進むでしょう。「パートナーシップ構築宣言」は、そういうことを目指す宣言なのだと思います。

―この宣言を通じて、企業経営者の方に期待していることは何でしょうか。

柳井 もっと大きな夢を持ってほしいと思います。それには現実を把握することが欠かせません。意外に経営者は、現実を見ていないものです。その証拠に、「あなたの業界はいい業界ですか?」と聞くと、大抵「はい」と答えます。でも、儲(もう)かっていなければいい業界とは言えないでしょう? ならば、そうなるにはどうすればいいかを真剣に考えて努力する。それには仲間が必要です。中小企業同士でもいいし、大企業相手でもいいので、仲間を増やしてオープンイノベーションをしていくことです。何度も言いますが、それには経営者自らが動いて、まずは社内でイノベーションを起こしてください。

会社データ

社名:株式会社ファーストリテイリング

所在地:山口県山口市佐山10717-1

HP:https://www.fastretailing.com/jp/

※月刊石垣2021年3月号に掲載された記事です。

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