国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が閉幕した。「産業革命以来の気温上昇を1・5度以内に抑える」という点で一致した上で、温暖化対策のカギを握る石炭火力発電には「段階的削減」と、「全廃」よりも緩やかだが制限が加わった。経済成長が続くアジアの多くの国の電力供給に大きな課題が突き付けられた。
BP統計によると、2020年の二酸化炭素排出量の世界に占める比率は中国が最大の30・9%で、インドが3位の7・2%、日本が5位の3・2%で、アジア全体では51・8%と過半を占める。しかも中国は10年比で21・5%増、インドは39・3%増と日米、EU諸国が減少している中で、二酸化炭素排出を伸ばし続けている。地球温暖化は実はアジアの問題といっても過言ではない。
今夏以降、電力不足で経済が混乱した中国は過去最大レベルまで石炭を増産し、石炭火力発電依存に逆戻りした。原子力発電、再生可能エネルギーの強化、天然ガス利用の拡大を進める中国もコストの安い石炭依存から抜け出せないとすれば、東南アジア諸国にとって石炭火力抜きでの成長戦略はないだろう。建設や運転のコスト、供給安定性、技術的成熟度などの面で、石炭火力に勝る発電所は見付けにくい。フィリピン、インドネシア、ベトナムなど原子力に関心を高める国もあるが、建設コストや安全に運転する能力など疑問符も付く。石炭火力は事実上、唯一に近い選択肢なのだ。
中国の電力不足では工場が停電し、生産計画が狂った日系企業が多かった。電力不足はアジア各国に共通する課題となり、地球温暖化対策も大きな影響を持つ。工場の立地では、今後5年、10年の電力供給計画も調べた上で、決断を下すべきだろう。地球温暖化対策と整合性のとれた石炭火力発電、すなわちCCS(二酸化炭素の回収、貯蔵)やアンモニア、木質チップの混焼などを備えた発電所の整備に動いているかが注目点だ。
LNG火力への依存が高すぎれば、電力コストの高騰や調達難による停電リスクがある。再生可能エネルギーの比率が高いことは日常的な電力供給の不安定性につながりかねない。注目される電源構成を調べることをお勧めしたい。例えばタイは発電の65%が天然ガス火力、ベトナムは51%が石炭火力、インドは72%が石炭火力と偏りがある。再生可能エネルギーはタイが12%、インドが10%と先進国並みに高いが、ベトナムは4%にとどまる。電源構成を新たな進出の検討尺度にすべきなのだ。
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