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テーマ別企業事例 自社の「強み」×「進出先」が成否を分ける 海外展開に勝算あり

事例2 中国・東南アジア圏への店舗展開で生き残りを図る

フレックスジャパン(長野県千曲市)

インドネシアのショップにはバーをイメージしたシャツカウンターが設けられている

長野県千曲市にあるフレックスジャパンは、国内シェアの約30%を占めるシャツ専門メーカーである。同社は2000年以降、少子高齢化や需要の変化による国内市場の縮小を見据えて、海外への販路開拓にも乗り出し、現在、東南アジアを中心に28店舗を展開。総売り上げに占める海外売上比率も徐々に上昇している。

いずれ海外に出るなら早い方がいい

少子高齢化による国内市場の縮小により、明るい話題に乏しいアパレル業界。そうした中で、早くから海外に進出し、中国や東南アジア圏へ店舗展開を進めてきたのがフレックスジャパンだ。同社は現時点でインドネシアに11店舗、ベトナムに3店舗、中国に6店舗、フィリピンに4店舗と、着実に販売拠点を拡大している。

同社は1940年に軍需シャツ製造で創業したが、戦後は何でも縫製する下請けでしのぎ、後にワイシャツに特化したメーカーへと舵を切った。下請けの傍ら、自社で企画したシャツの製造にも乗り出し、やがて自社ブランド製品だけで経営が成り立つまでに成長した。

「日本でワイシャツはファッション製品ではなく、工業製品という位置付けなんです。そのため、いかに製造コストを抑えるかに重点が置かれ、国内生産ではいずれ限界が来て、海外に出るときが来ると予測していました」と同社社長の矢島隆生さんは語る。

ならば早い方がいいと、70年に韓国の工場と提携し、海外生産をスタートした。88年にはインドネシアに、90年には中国に合弁工場を設立。一時は工場が五つに増えるも、中国での人件費が徐々に上がってきて採算が取れなくなり、ミャンマーに初の自社工場を建設した。続いてバングラデシュに専属工場を設立した。

「結局、人件費の安いところへと流れ流れていった形ですが、国によって風習や国民性、仕事への考え方が違うので、いろいろな経験を積みました」

気候の似たインドネシアのニーズにピタリとはまる

同社が海外での店舗展開に乗り出したのは2000年を越えたころのことだ。当時、製造していた年間1000万枚のワイシャツはすべて日本市場向けで、国内シェアの30%近くを占めていたが、先行きは不透明になりつつあった。

「海外への進出は販路拡大の目的もありますが、従業員対応がきっかけです。中国工場の責任者から、『中国も経済発展しているので販売もやらせてほしい』と要望が出まして。現地従業員の意欲に応えようと思ったんです」

中国でオープンしたシャツショップは、一時は70~80店舗まで増えて急成長を遂げる。また、当時登場したばかりの中国IT企業・アリババのオンラインマーケットにもいち早く出店し、優良出店者として表彰されるまでになった。しかし、その後中国では電子商取引(EC)が急速に普及し、実店舗の売り上げが急減する。

「やむなく不採算店を整理しました。EC市場も激戦区となってしまいましたが、そこには未来像もあるので、試行錯誤しながら居座ろうと考えています」

自社の強みと相手国のニーズがピタリとはまったのが、15年に初出店したインドネシアだ。日本以上に高温多湿なインドネシアでは、スーツよりもシャツの需要が高かったからだ。日本では05年からクール・ビズがスタートし、蒸し暑い夏を快適に過ごせるシャツ素材が次々に開発されている。しかも、シャツをアウターとして活用できるように、色やデザインが豊富になったこともアドバンテージとなった。

「時期もよかったんです。インドネシアはこの5~6年で中産階級が増え、日本製品が売れるようになってきました。おかげさまで好調を維持しています」

リスクを恐れてやらないこともリスク

こうして海外展開を進める同社だが、あえて複数の国で展開しているのはリスクを分散させる狙いもあるのだという。早い段階から海外に生産拠点を持ってきたため、相手国の事情が分かっていることも有利に働いている。

「すでに出来上がっている市場で商品を売るのは至難の業です。その点、東南アジアは今経済成長していて、人口も増えています。そして何より機能性と品質の高い日本製品を必要としており、魅力的な市場だと感じています」

実際に海外に打って出るにはそれ相応のリスクを負い、必ず成功する保証もない。しかし、「失敗を恐れてやらないことも手遅れになるリスク」だと矢島さんは言う。

同社は現在、米国のベンチャー企業のオファーを受け、オーダーメードのシャツを世界に向けてネット販売するという新たな事業にも取り組んでいる。これまでシャツは既製品が主流で、オーダーメードは一部の富裕層が利用するものと考えてきたが、海外に工場を持つ同社ならコストを抑えて製造することができる。このビジネスモデルをきっかけに、今後はオーダーメードが一般化していくのではと期待を寄せているという。

「今は年間総売り上げに占める海外の売り上げはまだ数%ですが、近い将来30%程度まで引き上げていきたい。今後ますます国の境目がなくなっていく中で生き残っていくためにも、井の中の蛙にならないようにと常に自分に言い聞かせています」と、矢島さんは柔和な表情を引き締めた。

会社データ

社名:フレックスジャパン株式会社

所在地:長野県千曲市屋代2451

電話:026-261-3000

代表者:矢島隆生 代表取締役社長

従業員:450人

HP:https://www.flexjapan.co.jp/

※月刊石垣2019年10月号に掲載された記事です。

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