日商 Assist Biz

更新

テーマ別企業事例 自社の「強み」×「進出先」が成否を分ける 海外展開に勝算あり

事例3 尾道で製品をつくって世界で勝負する自社の何で勝負するかが進出成功の鍵

山本製作所(広島県尾道市)

山本製作所では、ドライクリーニング用機器やコインランドリー機器、リネンサプライ機器、施設向け機器などを製造・販売している

広島県尾道市に本社を置く業務用クリーニング機器メーカーの山本製作所は、2012年に米国に現地法人を設立し、米国市場に進出。その後はオーストラリアでも販売を始め、昨年10月にはフランスにも現地法人を設立し、ヨーロッパ進出も果たした。同社が海外市場に進出するにあたり鍵となったのは、自社の何で勝負するかが見えたことだという。

中国のメーカーとは違うゾーンで勝負する

1947年に創業した山本製作所は、創業者の先代社長が台湾・韓国向けに販売を始めて以来、海外展開はすでに40年もの歴史があるが、現社長の山本尚平さんが後を継いでからは、欧米への進出を目指すようになった。

「父は技術系でしたが、私は43年前にこの業界に入ってから、ずっと営業開拓を行ってきました。17年前に社長を継ぎ、その2年目に、これからは日本だけではなく世界の流れを見ておく必要があると思い、会社の幹部10人ほどと一緒に、ドイツのフランクフルトで開催されている展示会に行きました。そこでは、欧米の企業に比べて自分たちの技術的な遅れを感じてがくぜんとしました。そこで帰国してすぐに従業員を集めて、米国進出を目指すと宣言しました。世界経済の中心はやはり米国なので、そこで勝負したいと思ったのです」と山本さんは振り返る。

当時、国内の同業他社で欧米に展開しているメーカーはなかった。それでも山本さんがことあるごとにその思いを語っていると、知人からニューヨークに行こうと誘われた。そこで販売パートナーと知り合い、米国進出を図ることになった。

「とはいえ、すぐに進出できるわけではありません。同じ業務用洗濯機といっても日本と米国では仕様が異なりますし、UL(安全機関)やETL(北米向け安全認証)といった電気機器やガス機器の安全規格の認証も得なければならない。しかも、すでに中国のメーカーが進出していたので、彼らと同じゾーンで戦ったら、価格だけの勝負になってしまいます。彼らとは違うゾーンで勝負していかないといけませんでした」

現地法人をつくることが販売していく上で重要

価格勝負にしないためには、米国市場で他社にはない製品を出す必要性を山本さんは痛感した。そこで思いついたのが、特別な溶剤を使って洗うドライクリーニング機ではなく、水で洗うウエットクリーニング機だった。

「ホテルや病院のシーツやガウンなどを大量に洗濯する産業クリーニングで使われるウエットクリーニングは洗濯脱水機が主流なのですが、われわれはそれに乾燥機能も加え、洗濯脱水乾燥機にしました。これは家庭用にはありましたが、業務用ではそれまでなかったんです。それを社内で開発し、米国の展示会に出展しました」

特徴的な製品ということで注目されたが、最初に組んだ販売パートナーとはうまくいかず、自社で現地法人を設立することにした。

「やはり自社で現地法人を立ち上げないとうまくいきません。販売ディーラーも忙しいので、現地に法人をつくってやる気を見せないと、なかなか取り扱ってくれないんです。そこで現地スタッフを雇ってヤマモト・ジャパンという会社を立ち上げたのが2012年のことでした。それからは、私も毎月米国に渡り、現地スタッフと一緒に、販売してくれるディーラーを開拓していきました」

同社のもう一つの特徴が、部品の9割以上を内製化していることだ。そのため部品を20年、30年と続けて補給することができる。もともと堅牢(けんろう)なつくりで長持ちすることに加え、壊れた部品も長年にわたって補給されるため、米国での評判も上がっていった。

「まだ順調とはいえませんが、この2、3年でなんとかなってきたなという感じにはなりました。将来的には米国が当社にとって非常に重要な市場になるだろうと強く感じています」

米国に進出したことがほかの国々への足掛かりに

世界経済の中心である米国には世界中から人が集まる。同社の米国市場進出は、ほかの国々への展開の足掛かりともなっていった。

「後に中国とオーストラリア、ヨーロッパに進出することになりましたが、どれも米国で知り合った人との縁が始まりです。米国とヨーロッパでは機械の仕様は異なりますが、どちらも思考回路が似ているので、米国での経験はヨーロッパでも生きています。フランスの法人にも現地スタッフ一人を置いて、米国と同様に、私と一緒になって市場を開拓しています」

同社の昨年の売り上げは47億円ほどだったが、これを8年後には100億円に伸ばすことを目標にしている。そのためには海外市場への展開は不可欠で、山本さんがこれまで海外を回ってきた経験から、それは不可能ではないと考えているという。

「海外市場に進出する際に重要なのは、自社の何で勝負するかが見えるかどうかということ。それが見えなかったら、何回行ってもだめだと思います。もう一つは、最初は特徴のある製品で勝負しないと見向きもされないということ。当社はほかにはないウエットクリーニングの洗濯脱水乾燥機で勝負するというのが見えたから、なんとかやっていくことができました」

同社では今年から新工場2棟が稼働を始め、従業員もこの2年で50人増員した。また、部品の内製化も95%以上を目指している。これにより製品の供給力を高め、さらなる市場拡大に挑んでいく。山本さんは「尾道をラーメンだけでなく、洗濯機のまちにもしたいんです」と力を込めて語った。

会社データ

社名:株式会社山本製作所(やまもとせいさくしょ)

所在地:広島県尾道市長者原1-220-19

電話:0848-48-5300

代表者:山本尚平 代表取締役

従業員:180人

HP:https://www.onomichi-yamamoto.co.jp/

※月刊石垣2019年10月号に掲載された記事です。

次の記事

株式会社セルタン/大阪製罐株式会社

“インスタ映え”という言葉が一般的に使われるようにSNS(ツイッターやインスタグラムなどに代表されるソーシャルネットワークシステム)は、今や新たな宣伝媒体として大きな力…

前の記事

株式会社三松/合名会社鶴来家/上野油業株式会社/有限会社空閑園芸

巨大地震をはじめとする自然災害や火災……、さまざまな災害に備えたBCP(事業継続計画)対策の重要性が叫ばれているが、中小・小規模企業ではBCP対策がなかなか進んでいないとい…

関連記事

西光エンジニアリング株式会社

BCP(事業存続計画)本来の意味は、企業を存続させて、雇用と顧客を守るということである。自然災害の多いわが国の場合は、BCPについて、災害から社員や社屋・施設を守る防災計…

釧路駅西商店街振興組合/中町商店街振興組合

人口流出や郊外型の大型ショッピング施設などに押されて、苦境に追い込まれている地方の商店街も多い。しかし、そのまちの特色や地域の名産を生かし、見事に復活した商店街もあ…

株式会社WORK SMILE LABO/株式会社岡部

日本をはじめ世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス禍によって、大小を問わず‶職場閉鎖〟の危機に見舞われた企業も多い。そこで、職場内の感染予防とBCP(事業継続計画…